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紀平 どのようなことがきっかけで、ネットワークに所属するのでしょうか。
久松 個人的な体験に結びつく何かがあり、強くフックとなる誰かの発言や記事などがきっかけとなるように思います。
紀平 ネットワークに属していた方たちの考えが変わることはあるのでしょうか。
森田 ネットワークによっても異なるのでしょうが、時間が後押しすることもあるでしょう。例えば、他のリーダーが出てきて主張が変わったとか、子供が大きくなって関心が変わったとかで、忘れ去られることもあるかもしれません。
久松 そんな程度のものなのに強力ですよ。忘却はいいですが、例えば、福島県の農産物の棚が奪われたままの状態での忘却です。数年で忘れる程度のものなのに、実害がありすぎですよ。
唐木 「日替わりリスク」ですね。毎日違うリスクを見つけて、昨日のリスクを忘れて行きます。ただそのなかのいくつかの問題が、長く続いていますね。
久松 農薬、添加物、遺伝子組換えは、ビジネスが絡んでいるので長いですよね。「無農薬」「無添加」「ノンGMO」を謳うことに「風評利益」がありますからね。
「正しい藁」をつかませてあげる方法――食べ物情報に食われない
紀平 「無農薬」「無添加」「ノンGMO」を好む層にお母さんたちがいます。とくに子供の健康や、発達に心配事や悩みを抱えているお母さんたちは、残留農薬や添加物を気にする傾向があると感じています。科学や正しい情報で、このような悩みを持って苦しんでいる方たちに寄り添う方法はあるのでしょうか。
久松 溺れている人は、すがりやすく作っている藁に飛びつきます。どんな藁であるかを見るゆとりはありません。現代はすがりやすい藁が、インターネット上にあふれていて、飛びついてすがることが以前より簡単です。情報を発信する側も読み手側も、ちゃんと考えなくなってきています。
溺れている人の心情に理解がないまま、間違った藁にすがる人を「科学的に間違っている!」と責めることは、コミュニケーションとして有効でないと思います。
嘘を発信する人もたくさんいますが、タチが悪いのは、悪意なく嘘をいう人です。例えばアトピーで困っているお母さんが、それが農薬のせいだと思い込み、「農薬は悪だ」と善意で広めているケースなどは厄介です。素人ならともかく、専門家と称されている人のなかにも「善意の嘘発信」があります。悩んでいる人に正しい藁をつかませるのが科学の役割なのに、それができていません。ただ、嘘に簡単にだまされた人を救ってあげるコストを周りが負うのか?とも思いますね。
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紀平真理子 キヒラマリコ
1985年、愛知県生まれ。2011年、オランダへ移住し、食や農業に関するリサーチ、本誌や馬鈴薯専門誌『ポテカル』への寄稿を開始。2016年、オランダVan Hall Larenstein University of Applied Sciences農村開発コミュニケーション修士卒業。同年10月に帰国し、農業関連記事執筆やイベントコーディネート、海外資材導入コーディネート、研修・トレーニング、その他農業関連事業サポートを行なうmaru communicateを立ち上げる。今年9月、世界の離乳食をテーマにした『FOOD&BABY 世界の赤ちゃんとたべもの』を発行。食の6次産業化プロデューサーレベル3認定、日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。
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