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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第13回(番外編)世界ワインは成長産業か?西欧先進国は消費減、輸出伸長
- 評論家 叶芳和
- 第33回 2020年01月29日
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欧州の生産は消費量ほどの減少ではない。つまり、輸出が伸びているのだ。欧州圏のワイン輸出は2000年代初めの5460万hlから、18年7300万hlへ増えた。特にスペインの輸出増加が大きく、1210万hlから2200万hlへと急増している。
■ワインは輸出産業
ワインは“輸出産業”である。主要国では、生産に占める輸出比率は3~5割に達する。フランス29%、イタリア36%、スペイン48%、チリ72%、オーストラリア67%と高い(表4参照、2018年)。
ちなみに、ワイン貿易は“水平分業”である。フランスはワインの輸出国であるが、輸入国でもある。高級ワインを輸出し、低価格ワインを輸入している(平均輸出価格は6.6ドル/kg、輸入価格は1.2ドル)。双方向貿易は米国、イタリアでも然りである。輸出もあれば輸入もある貿易形態を示すグルーベル=ロイド指数(Grubel-Lloyd index)は高い(注)。ただし、チリなど途上国は輸出は多いが輸入は少ない。一方通行である。
注:GL指数が高い場合、双方向の貿易であり、逆に低い場合、一方通行を意味する。GL指数は輸出と輸入が同じ額である場合100となり、輸出あるいは輸入のいずれかが0の場合0となる)。
GL指数を計算すると(数量ベース、2018年)、フランス67、米国47、オーストラリア19、イタリア19と高い(筆者計算)。ただし、双方向貿易は先進国の姿である。これに対し、発展途上国のGL指数は、スペイン5、南ア4、チリ0と低い。
■輸出価格は上昇トレンド
金額ベースでワイン輸出の推移を見ると、世界のワイン輸出は2000年の127億ドルから、16年323億ドルへと、年率6%の伸び率である(FAO国連食糧農業機関統計)。「成長産業」と言うに相応しい高い伸び率だ。数量ベースの伸びは3%であるから、価格上昇の効果が大きい(図2・表5参照)。
フランスワインの平均輸出価格は2000年の3.4ドル(1kg当たり)から、17年6・6ドルへと、2倍近く上昇した。イタリアも、同期間に、1.5ドルから3.1ドルへ上昇した。平均輸出価格は長期的に上昇トレンドにある。
ちなみに、平均輸出価格が一番高いのはフランスである。フランス6.6ドル、米国4.3ドル、イタリア3.1ドルと続き、オーストラリア2.5ドル、チリ2.1ドル、スペイン1.4ドル、南ア1.3ドルである(17年、FAOSTAT)。先進国の価格が高く、途上国になるにしたがって安い。フランスの輸出価格がダントツに高いが“ブランド力”であろう。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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