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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
米国(4) 連邦法のヘンプ完全合法化を受け新たに挑戦するケンタッキー州
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第26回 2020年01月29日
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しかし、この制度は連邦法で禁止している大麻草を研究目的で特別に栽培許可するもので、本格的な商業栽培には不完全だった。例えば、収穫したヘンプの藁束を隣の州の工場へ輸送するのは違法だったり、播種用種子の輸入には麻薬取締局(DEA)の面倒な許可が必要だったり、作物保険がないため天候不順のリスクは農家が全責任を負うことなどの不備を抱えていたのである。
全米レベルの農業法で産業用ヘンプを規定
こうした課題を踏まえて「2014年産業用ヘンプ農業法」を更新するために、全米レベルで動いてきたのが、ケンタッキー州選出の二人の上院議員(共和党)、ミッチ・マコーネル氏とランド・ポール氏だった。彼らが提案した「2018年産業用ヘンプ農業法案」は、共和・民主両党の超党派議員らの幅広い支持を得て、18年12月11日に上院で87対13、翌12日には下院で369対47の圧倒的多数で可決された。特筆すべきは、この産業用ヘンプ農業法案が、5年ごとに改正される連邦の農業法案に組み入れられたことである。産業用ヘンプに関わる項目を含む「2018年農業法(Farm Bill 2018)」は、12月20日にトランプ大統領が法案に署名し、19年1月1日に施行された。
ヘンプに関するこの法改正における要点を表2にまとめた。この中で最も影響が大きいのは、すべての大麻草は1937年のマリファナ課税法以来、80年以上も麻薬取締局の管轄だったが、ヘンプについてはトウモロコシや小麦といった一般的な農作物と同じく農務省(USDA)の管轄になったことである。この変更に伴い、19年4月に播種用種子の輸入に際して麻薬取締局の特別許可は必要なくなり、一般的な輸入種子と同じ植物検疫のみとなった。
農務省が19年10月末に示したガイドラインをベースに、各州の農業省はヘンプ栽培を実施するための手続き、生産者の要件、生産地の地理情報管理、作物のTHC濃度検査の手順、年1回の検査実施などの計画を立てる。この制度の本格運用は、20年の作付けから始まる。
高まるCBDへの注目度
米国内でも先駆的なケンタッキー州では、新しい制度の本格運用を見据えて19年の時点で作付面積は1万724ha、生産者978人、加工業者200社とまさに爆発的に広がり(表1)、州内にそれぞれ拠点を構えている(図1)。同州でのヘンプの栽培目的は、14年当初は約5割が種子採取だったが、19年には健康機能成分であるCBD(カンナビジオール)採取が92%を占めている。現状は輸入品が中心の米国ヘンプ市場でもCBD製品の売上高が突出しており(図2)、CBDの供給源として期待されていることがわかる。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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