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土門「辛」聞

国による減反枠配分がなくなって変わったこと、変わらなかったこと


議事録を読んでいて、基本方針は農協から異論が出ないように作られているなと確信した。金井委員のその後に続く発言は、事前打ち合わせ説を裏付ける。19年11月の食糧部会では、基本方針が示した20年産の減反方針について「麦、大豆、飼料用米をしっかり作付けしていくということが最も肝要」と前置きして、次のように述べている。
「それ(減反強化)をどうするかということは大変な問題でありまして、昨年もうまくいかなかったというか、今年もなかなか理解を得られない部分も多々あったところもあったわけであり、しっかり地域で取り組みやすいような形を検討していただければと思う。この後、予算対策にもなってくるけれども、水田フル活用に関する交付体系や予算についてはしっかり単価も含めて確保していただきたい」
食糧部会の主役は、全中が送り出した金井委員だ。全中の描いたシナリオ通りに基本方針が策定され、それに基づいて全中予算陳情が始まるという図式である。
そして年末の概算要求にしっかりと反映された。水田活用の直接支払交付金が前年度より増額された。飼料用米や米粉用米には複数年契約を条件にしてさらなる増産を目指す。新たに水田農業高収益化推進助成という補助金も新設。野菜などに転作したら10a2万円の補助金を5年間助成するものだ。いずれも全中の要望に応えたものだった。
これだけのアドバンテージを得ていれば、誰しも農協の米事業は、組合員の強い支持を得て、さぞかし盤石だと思われるだろう。どれだけ盤石か検証してみよう。農水省「米をめぐる関係資料」には、いつの時代からか米流通における農協のシェアが分かるデータが掲載されるようになった。19年11月版では、全国の生産者が17年に生産した782万tのうち農協に出荷したのは335万t。シェアにして42.8%だった。
手許に07年の資料があった。この年は871万tの生産に対し農協への出荷は378万t。シェアにして43.4%。17年産と比較するとシェア的には微減だが、5割の大台割れには変わりがない。農協系・商人系という括りなら、農協系はマーケットでの少数派になる。政治家を使って米政策を差配してもこの程度のシェアしか持てないのである。
(次号に続く)

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