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ただ、関東で暮らす同世代の若者に、定期的に野菜やコメを受け取るスタイルは合わなかった。料金を前払いしてくれる人はほんのわずかで、顧客が不作のリスクまで負うという本来のCSAにはなり切っていなかった。顧客も、自分を応援するために無理に買ってくれていると気づいた。定期的にセットを送るCSAの仕組みの整備から手を引いた。
パラグアイで開けた視界
壁にぶつかって思い悩んだ松橋にとって、2013年に研修でパラグアイを訪れたことが大きな推進力になった。日本人移民が入植したイグアス移住地は、主に大豆を栽培しており、すべて遺伝子組み換え大豆だった。地元の農協に聞くと、平均面積は300haに達するという。
大潟村は、1964年、大規模農業のモデルとして誕生した。しかし、規模の追求というのは、日本ですべき農業とは違うのではないか。
「日本が一経営体300haってやった場合に、大潟村でさえ現状が平均18haですから、その十数倍になりますよね。となると、人口が十数分の1になりますね。それが日本全体として追いかけるべきモデルなのか、疑問なんです」
カロリー供給のことだけ考えるなら、大潟村で農業をやっている意味はないとパラグアイで痛感した。では自分はなぜこの場所で農業をするのか。たどり着いた答えは、取引先や消費者からなるコミュニティーに根差した「自分ごと」として捉えてもらえる農業だった。
今後について「自分が農業をやった方がいい理由を考えてシェアする。その路線は変わりません。その時々に求められる価値をどう出すか、都度考えることになると思う」と語る。将来やってみたいことの一つが、家族以外の雇用を生み、就業規則を作ったり明確な役割分担をしたりして、より組織的な経営に転換すること。現状の個人事業だと、誰かがケガなどで働けない期間ができた場合に円滑な運営にリスクがある。それから、農家だと自己紹介すると言われる「大変だね」という言葉も動機の一つ。。
「褒められているようで、半分笑われているんじゃないかって思う時もあるんですね」
農家という働き方を普通の会社員と変わらなくしたい、就農したい人が安心して働けるプラットフォームになりたいと考えている。 (敬称略)
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