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特集

日本の農薬使用に関して言われていることの嘘



【Trouw紙記事の不可解な点】

(1)圧倒的に少ないサンプリング数
この報道には不可解な点がいくつかある。第一に同紙は、委託した調査と分析により、この事実が明らかになったと述べているが、具体的な委託機関は明示されていない。また、調査方法やサンプリング方法に関しても十分とはいえない。公表しているデータを見ると、たとえば最も危険だと指摘されたスペイン産ネクタリンは、67%から残留農薬が検出されたとあるが、サンプリング数はわずか12だ。少ない作物だとサンプル数5というものまである。また、残留基準値を超えた割合のみで、どの程度超過したか記載はない。NVWA(オランダ食品消費者製品安全庁)が行なった調査では、50前後のサンプル数で、総数5000以上。小売、加工、輸入機関など様々な市場セグメントからサンプリングをしたNVWAの調査と比較しても、総数が圧倒的に少ない。また、どこからサンプリングしたかも明記されていない。

(2)NVWA(オランダ食品消費者製品安全庁)のデータに模した形式
次に、NVWAの情報を参照したように見せた点である。同庁は2017年1月から2018年12月に「農産物の残留農薬調査」を実施した。Trouw紙はこの結果に基づいて調査を実施したと記事の中で触れているが、そもそもNVWAの調査目的は、主に輸入相手国とその農産物の組み合わせで残留基準値を超えていないか、また市場セグメントごとに注意するべき点を把握することで「リスクに基づいた管理のための注意点」を明確化し(表1)、必要があれば輸入時の規制強化を行なうためである。
NVWAはTrouw紙に対して、オランダ国内およびEU諸国の農産物の残留農薬は比較的少ないこと、Trouw紙の分析結果も確認できず、残留物質が内分泌撹乱物質であるかどうか測定はしていないと述べている。

ちなみに、ヨーロッパでも残留基準値(MRL)は日本と同様に、安全係数が使用され、100分の1で設定されている。そのため、見つかった残留農薬レベルがMRLの100倍高い場合でも、慢性的な影響はないとされている。

(3)出典の半分以上が反農薬団体の情報
Trouw紙の記事は半分以上が、60カ国以上600のNGO団体のネットワーク機能を司り、農薬反対キャンペーンや抗議を取りまとめるPANヨーロッパ(Pesticide Action Network/農薬アクションネットワーク)の発言や情報である。この団体の情報が引用されていることも、調査自体が偏っている可能性を否定できない。

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