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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第14回 本物のワイナリーをめざす厳格な産地表示主義者 (株)オチガビワイナリー(北海道余市町)


新潟のカーブドッチは大成功したといえよう。しかし、この実績を残し、12年、落氏はもっと良いブドウを求めて(温暖化対策も)、北海道余市町に来た(注:余市のワイン適性については拙稿「ドメーヌタカヒコ論」本誌19年8月号参照)。そして現在の奥さん雅美さんと結婚した。「オチガビ」という社名は、落さんのオチと、奥さんの雅美をガビと読んで付けた名前である。

【2】オチガビワイナリーの経営概要――本物意識と贅を尽くした超高級仕様の施設

ニッカウヰスキー余市蒸留所より少し山手にオチガビワイナリーがある(余市町山田町)。元はリンゴや生食用ブドウの果樹園であったが、後継者不在になっていたところを再造成した土地である。緩やかな傾斜の道の下から見ると、中腹に古代ローマのコロシアムを想わせる円形の立派な建物が見える。札幌・小樽の山々が遠望できるロケーションで、周辺はブドウ畑が広がり、西洋庭園に取り囲まれている。夏は緑に囲まれた景観が見事であろう(筆者訪問時は雪の中)。
施設は超高級仕様である。レストランからの眺めが良い。ショップは木のぬくもりを感じさせる空間で、壁は音響にも配慮されており、コンサートも開催可能のようだ。醸造所は地下にある。ステンレスの中でも一番高いモリブデン合金タンク(独シュパイデル社製)が約40個(計8万リットル)並んでいる。熱伝導率が高いので、13℃の水を小さな腹巻様のジャケットにかけるだけで冷却効果が大きいようだ。高価なため、日本では普及していないという。
熟成は新樽を使う。樹齢150年生以上250年生以下の壮年期のミズナラを使ったフランソワ・フレール社製の木樽である(注:仏ブルゴーニュにある。同社製の木樽はロマネ・コンティほか世界の名だたるワインメーカーが使用している)。「品質にこだわっている」という暗黙のメッセージである。この木樽は3年使ったら捨てる(それ以上使ったら売ってくれない)。ミズナラの山林をサステナブルなものにするための方針であろう。定期的に木樽の更新需要を発生させ、枝打ち等の費用を調達しているのであろう。
同じ地下に、「特別試飲室」がある。特別に招かれたゲスト7人と、年代物のワインの最後の1本を楽しむための部屋である(7人なのはフルボトル1本が試飲7人分だから)。ヨーロッパのワイナリーではどこにでも設けられている小部屋である。世界標準だが、日本には他にない。

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