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しかし、この届出が漏れてしまっていることが多いため、年金事務所の調査の的にされています。この調査で届出漏れが判明した場合、変更すべき月に遡って標準報酬月額が改定されますので、昇給時の場合は保険料差額不足分を従業員から徴収する等の調整作業が発生します。
【指導を受けたら最大2年間の遡及加入!】
年金事務所による調査で「社会保険における加入漏れ」や「月額変更届の提出漏れ」が発覚した場合、現在最大2年間の遡及が発生します。
常勤従業員の所定労働時間が1日8時間/月160時間の場合、1週間の所定労働時間と1カ月の所定労働日数が4分の3(1日6時間、月120時間)以上のパート等従業員を加入させなければなりません。そして、加入日は2カ月連続で4分の3要件を超えて働いている月に遡り加入させることとなります。
(1)遡及加入は大きな負担!
例えば、通勤交通費を含む標準報酬月額が15万円の従業員で考えてみましょう。1カ月あたり厚生年金保険料として、本人と事業主折半で1万3,725円ずつ。これを最大2年間遡った場合、事業主側には1万3,725円×24カ月=32万9,400円と大きな負担が発生します。
健康保険料は加入組合や都道府県によって異なりますが、折半額を8,000円とすると24カ月分で19万2,000円。厚生年金と健康保険を合わせると50万円を超えることになります。
遡及加入の指導が従業員1人だけに留まれば、まだ支払いは可能かもしれません。しかし、同様の働き方の従業員が3名であれば約150万円、5名であれば約250万円、と一時的に多大な保険料の支払いが発生することになります。しかも、給与額が高い従業員がいれば、そのぶん社会保険料も高くなり、事業主の負担はさらに増えることになります。
月々適正に社会保険加入を進めていくことが重要であると言われる所以です。
(2)医療保険料の精算
遡及加入をする場合、国民健康保険にて医療機関に掛かった費用を一度立て替える必要が出てきます。一時的とはいえ、扶養家族もいらした場合には本人とその家族の医療費を一度全額負担し、健康保険の切り替え後に精算する流れです。従業員本人が医療機関に掛かった際の保険料ではありますが。本人による保険料の精算が難しいとなると、事業主側で一度代わりに負担をするなどの対応が必要となります。
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2020年に入り労働局の調査、ハローワーク経由の会計検査院の調査、と年金事務所以外の調査対応についての相談も増えてきています。働き方改革法案が施行され、事業主の労務管理責任が増している今、一度適正に保険加入できているか、確認してみてください。
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矢萩大輔 ヤハギダイスケ
(有)人事・労務
代表取締役
大手ゼネコン勤務後、1995年に社会保険労務士として都内最年少で開業。起業支援ポータルサイト「ドリームゲート」アドバイザーとして新規就農にも相談に乗っている。農業を通したリーダーシップ研修の場として自社農園「アルパカファーム」を運営。八戸農業ビジネスナイトセミナーや、FM東京「あぐりずむ」の出演プロデュースなども。著書『脱家族経営!若者に魅力ある農業経営のレシピを教えます。』ほか。
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