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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

インド 衣料からCBD・医療用へ 持続可能な農村経済に貢献する作物に

長い歴史を持つ大麻文化

インドは、人口約13億人の半数以上が農業に従事し、農地面積が約1億5000万haと日本の国土の4倍もある農業大国である。大麻草の歴史は長く、紀元前1400年頃のインドの宗教経典『アタルバ・ヴェーダ』では、大麻草は神聖な植物として人々を不幸から解放し、病気やあらゆる悪霊から身を守るとされている。大麻樹脂は「チャラス」、花は「ガンジャ」、種子および葉は「バング」と区別して扱われてきた。
インド最大の宗教となったヒンズー教では、大麻草は三大神の1つで、創造と破壊を司る「シヴァ神」がもたらした贈り物とも、好物とも言い伝えられてきた。いまでもシヴァの祝日には、バングラッシーという大麻ペーストの入った飲料が振る舞われる(図1)。一方の仏教では、ブッタが悟りを開くまでの6年間に麻の実と麦しか食べない「麻麦の苦行」を行なったと言われている。
また、古代インド医学であるアーユルヴェーダでは、さまざまな病気の治療に大麻草が用いられてきた。カルカッタ医科大学の化学者のオショーネシーは、ガンジャやバングの研究成果を1842年に論文発表し、後に医療用大麻が西洋社会に広く知られるきっかけとなった。日本に明治初期に輸入された「印度大麻草」は1886年から1951年までの65年間『日本薬局方(公式な医薬品リスト)』に収載されていた。

世界的な禁止政策に反対し種子と葉は除外対象に

ところが、西洋諸国による植民地化が進むと、インドの大麻文化を取り締まる動きが出てくる。なかでもイギリス政府は、大麻の乱用が現地住民の健康を危険にさらし、狂気を引き起こしていると考えていた。そこで、大麻草が広範囲に使われていることを問題視し、大規模な研究調査を専門家チームに依頼した。インド全土のあらゆる社会階層から1193名の証人を選び、特に精神病院を対象に大麻が原因で精神病と疑われるすべての患者について2年間にわたって調べ、1894年に「インド大麻委員会報告」としてその結果が報告された。

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