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土門「辛」聞

国による減反枠配分がなくなって変わったこと、変わらなかったこと(2)

福岡県久留米市で新年恒例となった1月20日の「水田農業を通じて所得向上を図る会」。集荷商の三友商事株式会社(中島敏郎社長、本社・久留米市)の主催だ。2020年(令和2年)産の作付けで何を選べばよいか、そのヒントになる情報を生産者に提供するための研修会だった。

新規需要米は異常気象対策の救済作物

毎回驚かされるのは、その参加者数と多彩な顔ぶれだ。主催者発表で220名。地元・福岡だけでなく、佐賀や熊本などの生産者120名に、米、麦、取引業者100名という内訳。生産者の大半は、主食用米よりも、加工用米、米粉用米、飼料用米、WCS稲(発酵粗飼料)の新規需要米の生産に取り組む。取引業者も、米卸や集荷商だけでなく、醸造用米、麦製粉、雑穀、米粉、飼料など穀類全般をカバー。九州の新規需要米のことが丸分かりのような会合だ。
懇親会の場で佐賀からやってきた生産者から聞かされた話は大いに考えさせられた。「最近の台風には参るよ。上陸する数も多いし、雨や風の強さは半端じゃない。これまであまり例のなかった潮風による塩害が深刻だ。塩分で稲が枯れたり登熟不良になったりする。沿岸から10km入った地点でも被害が報告された。おかげで収量はガタ落ち。品質も低下。主食用米を作っても3、4俵の低い収量で品質も悪いとくれば、10aあたりの収入は5万円ぐらいにしかならない。飼料用米やWCS稲などに取り組めば高額助成金がついているので最低でも9万円にはなる。主食用米から切り替える生産者が着実に増えているよ」
九州地域で新規需要米の作付けが増えていることは前月号でも指摘した。当初は高額助成につられてのことだと思っていたが、佐賀の生産者の話を聞いて少し認識が変わった。台風や高温などによる気候変動を受けやすい九州地域は主食用米を作ろうとしても満足な品質のものを作れなくなってきたので、仕方なく主食用米から新規需要米に切り替えているということもあるようだ。あらためて九州地域における新規需要米の作付状況を調べてみた。
新規需要米の生産は九州7県で24%を引き受けている。WCS稲に至っては53%のシェアだ。トップの熊本は乳用牛が全国3位の飼養規模、肉用牛4位。それに次ぐ宮崎も、ブロイラーが全国トップ、豚は2位、肉用牛は3位。飼料用米やWCS稲を受け入れる生産基盤がある。ただ何となく気になるのは、宮崎と鹿児島の2県でWCS稲が多いことだ。高額の助成金狙いの粗っぽい捨て作りが多いという情報もあった。
あえて久留米訪問ルポから切り出したのは、需給見通しが正しいかどうか、その検討材料として提供したつもりだ。供給下振れの構造的な部分を指摘したつもりだ。
新規需要米と呼ぶ飼料用米や米粉用米などは、水田有効活用ということで導入された作物である。主食用米の生産を減らす目的なので減反作物という理解が正しい。スタートしたのは、旧民主党政権時代の10年のことだ。例の「戸別所得補償モデル事業」とセットで導入した「水田利活用自給率向上事業」で示された減反メニューだった。

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