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土門「辛」聞

国による減反枠配分がなくなって変わったこと、変わらなかったこと(2)


「価格は過去10年では2010年産に次ぐ高さで推移しており、その影響による消費減もある。机上では需給バランスがとれているという計算だが、実際にはタイト感がかなりあり、エンドユーザーは価格以上に量のことを懸念している。当社は年間約50万tの米を扱っているが、10月末では1万t程度の在庫しか持っていなかった。2019年産は作柄も歩留まりも悪いので、来年の端境期まで持つのかどうか。安定供給に不安があるため、ユーザーも使用量を減らす傾向にある。量をどんどん出せた時は、量販店でも新米フェアを打ってくれ、ユーザーもご飯を大盛りにしたり、お握りを大きくしたり、積極的に売っていこうという姿勢があった。今、量販店の店頭でも米売り場が縮小し、パックご飯の売り場が広がっている。ライフスタイルの変化で、パックご飯へ需要がシフトしており、生産量も10年前の10万t弱から19万tまで、ほぼ倍増している。そういうマーケットもあるので、ライフスタイルに合わせた消費拡大にも取り組むべき」
この陳述でポイントは3点ある。主食用米の供給について農水省の公表の供給量が実態より少ないこと、価格が10年産に次ぐ高値になったこと、その結果、需要を促すような特売セールが打てず、消費のブレーキ役となっていることだ。
藤尾委員の指摘に農水省が正面から答えなかったことはまことに残念である。同じ意見は日清製粉株式会社社長の山田貴夫委員からも出た。マーケットの指摘にもっと真摯に耳を傾けるべきだ。もっとも驚いたのは、消費者代表で委員に選ばれた主婦連会長の有田芳子委員の口から同調する意見が出なかったことだ。沈黙は同意。消費者代表とは言い難い態度だ。こういう人物を消費者代表として呼ぶべきではない。
最後に、その負のスパイラルを農水省に押しつける農協組織と農協族議員の思惑のようなものに触れておこう。農水省に減反ドライブをかけさせるのは、おそらく過剰米処理の苦い経験がトラウマのようになっているからではないかと思う。旧民主党が政権の座についてすぐに「米戸別所得補償モデル事業」を農政の看板政策に据えた。10年のことである。それと交換条件のような形で財政資金による在庫処理をやめた。政府による緊急買い上げのことである。
負のスパイラルを招く需給見通しは、そのトラウマから抜け出せない農水省、農協組織、農協族議員3者の妥協の産物なのかもしれない。
主食用米の需給見通しを2回にわたり取り上げた。農水省が責められるべきは、高値米価が消費減退を招くということを知りつつ全中と農協族議員の減反強化の要望をスンナリと受け入れてきたことだ。その結果、米は、消費減退という負のスパイラルから抜け出せず、ついに主食の座から引きずり下ろされてしまったことだ。実に罪深い。

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