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新・農業経営者ルポ

福島県浜通りの未来を切り拓く


広志の説得に行政や農協もうなずいた。こうして12年度産からコメの全量全袋検査が始まることになる。広志は、言い出しっぺということで、前
述のように福島県から検査を依頼されたのである。相馬市につくった農産物直売所でコメのほかにも野菜や果物の検査も始めた。こうして福島の
全量全袋検査によるデータで安全性の証明を発信し始めることになる。
農産物直売所も広志の仕掛けである。東京に避難しているときに縁があった(公財)日仏会館が支援を申し出てくれた。そのとき立ち上げたNPO法人野馬土がその支援を活用して直売所を設立した。現在は農事組合法人浜通り農産物供給センターが運営している。
野馬土は、地域の人々にコミュニティーの場を提供する活動や、県外の人々に発信する活動をしている。福島を支援してくれる会員たちに情報を発信したり、福島第一原発20km圏内ツアーを開催したりと忙しい。ツアー参加者は年間3000人前後に上るという。
みさき未来でも井田川地区の荒れ地で綿花を栽培し、綿摘みの体験イベントを開いている。関東圏の人々に井田川地区に足を運んでもらい、再興予定の水田や太陽光発電所を見てもらうこともできる。この綿は東京のオーガニックコットン製品の会社と、風力発電を引き継いだ企業がコラボし、「風で織るオーガニックコットン」というストーリー仕立てで商品化されている。
広志は、あえてすべて事実を見せることによって、不安を持つ人々が安心して福島の農業や農産物を応援できるようにしたのである。
「農業で食べていくのが自分の人生の目標だったので、そのために必要なことを一つひとつやってきた」

この地でできる姿を次の世代に見せる

野馬土の直売所には、草平が生産した農産物も並んでいる。現在、新地町では水稲のほか、キュウリやホウレンソウ、ダイコンなど少量多品目の野菜生産、鶏卵養鶏を営んでいる。コメはなるべく農薬と化成肥料を減らし、魚かすの発酵有機肥料を使用し、鶏は平飼いにするなど、特徴ある農業を目指している。本誌19年5月号特集で紹介したように、草平は18年5月、JGAPを取得した。それを機に農業経営をもっと洗練させたいと話す。
父の姿を見てきた草平は、みさき未来の代表として次の時代に向けて農業経営の足元を固めてきた。草平は広志によく言われることがある。
「これからはお前らがやらなきゃいけない」
広志は、福島県内の大学などに講師として呼ばれることもある。そのとき若い世代に必ずこう伝えている。

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