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特集

農業リスクマネジメント~国境なき時代の新たなリスク対応~

国境を越えてモノと人が行き来する時代、チャンスが広まる一方で、新たなリスクも生まれた。食品安全基準の国際化や需要の変動、病害虫の持ち込み、ひいては、このたびの新型肺炎もそのひとつだ。農業経営上のリスクは多岐にわたる。経営を維持するためには、日ごろからリスクマネジメントを意識しておくことが欠かせない。本特集では、農業経営上のリスクとして近年新たに加わった食材供給・食品加工事業と観光事業のリスク、国内外観光客による農地への病害虫持ち込みリスクを取り上げる。  (まとめ/平井ゆか)

食材供給・食品加工事業のリスクマネジメント 食生活を守る食材・食品の安全性確保

フードチェーンの源流である農水産業は、生産物はもとより、労働、環境などの分野でさまざまなリスクを抱えている。ここでは農業経営上の各種リスクのうち、消費者に提供し、かつ食生活に必要不可欠な生産物としての食材や食品のリスクマネジメントについて、食品安全政策学が専門の池戸重信氏が解説する。

池戸重信(いけど・しげのぶ)
1948年岐阜県生まれ。農林水産省消費生活課長、宮城大学副学長、JAS協会会長などを経て、現在、食品表示検定協会理事長などを兼任。専攻は食品安全政策学。著書に『食品表示の手引』(2016年、新日本法規出版)など。

日々の食生活に欠くことができない食材や食品は、生産、加工、流通等の各段階、すなわち「フードチェーン」を経て消費者に提供されているが、このチェーンの源流が農水産業の生産段階ということは古代から変わっておらず、その重要性も不変である。

【安全性は駅伝のタスキ】

近年、フードチェーンのなかで分業化や経路の複雑化が進むにつれ、流通する食品のリスクが多様化し、安全性の確保が容易ではなくなってきた。
食の安全性を駅伝に例えると、10人のランナーがタスキをつなぎ、たまに故障する走者がいればタスキが渡らない。安全性もタスキと同じで、フードチェーンの中の一人(一段階)が不適切な対応をすれば安全性は伝わらない。消費者というゴールに至らないばかりか、他の走者(食品関連事業者)の努力も無駄となる。したがって、食品関連事業者の安全対策は、経営規模とか予算の多寡にかかわらず的確な対応が求められる。「我が社は規模が小さいので無理」「予算がないからやらない」というわけにはいかず、どうしてもできない企業は食品を扱う資格がないとの厳しい認識が必要である。
昨今、日本の食文化が世界的に普及しつつあり、食材・食品流通の国際化が進んでいる。その要因のひとつには、日本の食材の品質や安全性に対する高い評価がある。この評価に客観性を持たせ、「見える化」を図ることで、信頼をより確実にするということが求められている。

【食品安全の3つのリスク分析】

はじめに、食品安全対策の法的な位置付けを確認しておこう。日本では、BSE問題などを機に2003年に食品安全基本法が制定され、それに基づいて諸施策が講じられている。同基本法では、農業者は「食品関連事業者」として位置付けられ、その「責務」として「食品の安全性の確保について第一義的責任を有していることを認識して、必要な措置を適切に講ずること」(第8条)と記されている。

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