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特集

農業リスクマネジメント~国境なき時代の新たなリスク対応~


食品安全基本法が制定される以前は、リスクはゼロにしようという観点の政策だった。しかし、リスクにゼロはあり得ないという前提に立ち、「リスク分析手法」を導入した。ここで言う「リスク」とは、食品中の残留農薬、食品添加物、有害微生物、放射性物質などによる健康への悪影響の確率である。「危害の発生確率×程度(毒性等の大きさ)」の関数で考えると、危害の発生確率か程度のどちらかを少なくすることでリスクも低減できるという考えである。
リスク分析は次の3要素で行なう。
(1)リスク評価
食品中に含まれるハザードを摂取することによって、どのくらいの確率でどの程度の健康への影響が起きるかを科学的に評価すること。
(2)リスク管理(マネジメント)
リスク評価を踏まえ、すべての関係者と協議しながら発生確率や程度を小さくするために対策をすること。
(3)リスクコミュニケーション
リスク評価、リスク管理の過程において、すべての関係者の間で、リスクに関する情報、意見などを交換すること。
行政では「リスク評価」は食品安全委員会、その評価を踏まえた「リスク管理」は、厚生労働省と農林水産省で講じられている。「リスクコミュニケーション」は、リスクの評価や管理等必要に応じて関係者が情報交換する。
リスク分析の3要素は、行政だけでなく各事業体においても適用できる。取り扱っている商品(農産物)の危害(ハザード)が何であり、それがどのくらいの大きさ・頻度なのかをできるだけ客観的に判断(リスク評価)し、かつ関係者の意見も聞いて(リスクコミュニケーション)、大きさや頻度を低減させる(リスク管理)ことで対処できる。これは農業生産現場において活用されることが期待されている。

【「見える化」のための工程管理方式】

「見える化」のために、どのような安全性確保の手法(道具)をとればよいのか。
従来、最終商品を検査する結果管理(ファイナルチェック)方式が採られてきた。しかし、結果管理方式にはいくつか課題がある。最終商品の農薬、微生物、異物を検査しようとしても、農薬だけで数百種類、有害微生物は無限にある。検査結果がシロであれば問題ないが、最終商品から有害なものが検出された場合、原因がどこにあるのか究明しなければならない。また、商品が完成してから抜き取り検査をすると、商品価値がなくなる。さらにサンプリングの検体はシロでも、全てがシロとは限らないという精度の問題もある。

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