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特集

農業リスクマネジメント~国境なき時代の新たなリスク対応~


こういう課題から注目されたのが、全工程において想定される全危害の要因分析などを行なう「工程管理方式(プロセスチェック方式)」である。これを社内のインフルエンザ対策を例にしてみると、感染した社員の有無を検査するのが「結果管理方式」とすれば、感染しないように社員の健康管理をするのが「工程管理方式」といえる。
農業生産工程管理のGAPと食品等事業者のためのHACCPは、「工程管理方式」の代表でもある。どちらも「見える化」による安全性確保の手法であり、持続的な改善活動である。
GAPやHACCPは、「守り(盾)」だけではなく「攻め(矛)」としても重要だ。政策では、「日本再興戦略」改訂2014年において、輸出促進のための環境整備として、「国際的に通用する規格の策定と我が国主導の国際規格づくりに取り組む」としている。また「食料・農業・農村基本計画」2015年において、「農林水産省のガイドラインに則した一定水準以上のGAPの普及、拡大を推進する」と記している。

【客観性の確保と第三者認証の活用】

GAPやHACCPのような自主管理かつ工程管理方式によるリスク管理を導入する場合、次のことに留意する必要がある。
(1)どの手法を使うかを決める。
(2)(1)の手法を導入した後、従事者が変わっても継続性が保てるよう文書でマニュアル化する。
(3)(2)のマニュアル通り実行したことを記録する。
このうち(1)と(2)については、外部の専門家など一緒に検討できる。最も事業者の負担になるのは(3)の記録であるが、農業でも工程管理方式に従って記録しておくことが重要だ。万一事故があった場合、生産工程のどこに問題があったのか後で特定するためである。また、フードチェーンが複雑化するなか、流通上で万一事故があった場合、生産段階での「シロの証明」をできるようにするためでもある。
こうした手法は対外的な姿勢のみならず、内部的にも肥培管理や栽培方法にフィードバックすることで、効率性や経済効果の向上につなげることに活用できる。
なお、投資効果を検討した上で第三者認証を取得することも有効だ。認証取得に関しては、(一社)全国農業改良普及支援協会で実施している農林水産省の補助制度の活用も参考にしてほしい。

【消費者への情報提供~予想される食品表示監視の強化】

食品安全基本法において、食品関連事業者は食品の安全性確保について一義的責任を負う。また、「事業活動に係る食品その他の物に関する正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない」(第9条)ことも記されている。この「情報」とは食品表示も含まれる。

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