記事閲覧
【江刺の稲】
衆院予算委でラウンドアップが話題に
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第285回 2020年03月30日
- この記事をPDFで読む
宮川議員は質問の最初に、乾燥した冷涼な気候と放牧や畑作が中心の英国を対照させて我が国とのha当たりの農薬使用量を農水省に答えさせる。農業環境の違いを無視して敢えて我が国と比較させて日本が英国の3倍以上のha当たり農薬散布量があることを農水省に語らせる。そのうえで、まさにデトックス・プロジェクト・ジャパンの面々の主張を下敷きにしてラウンドアップに関する不安を煽る。さらには、医薬品の生体による検査をしているのに農薬では試験の対象とされるげっ歯類だけでは安全性が確保できないのではないかと農薬の検査手法そのものにまで疑問を呈する。しかし、医薬品の場合は副作用の存在を前提としてその副作用のレベルが治療効果と秤にかけて有効性をチェックする試験である。これに対して農薬の承認に必要な試験は、生体に何の影響もない量を調べること。農薬の場合には生体や環境に対して何らかの障害がある場合にはそもそも承認されないのである。医薬のように副作用があっても治療効果があれば承認されることがあるのとは全く異なる基準なのだということを無視した質問なのである。そして、IARCの発がん性に関する報告や米国での裁判あるいはEU諸国でのラウンドアップに対する使用規制の流れなどを紹介し、江藤拓農林水産大臣に対して「ラウンドアップを安全と言えるか」と問う。この一連の質問自体がラウンドアップに対して国民の不安を煽るための印象操作というべきである。しかし、江藤大臣が、宮川議員の質問に対して「有機農業がベストである」などと発言しているのは問題だとも感じた。
会員の方はここからログイン

昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
