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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第15回 条件不利乗り越え金賞ワイン技術は自然に代替する (株)島根ワイナリー(島根県出雲市)
- 評論家 叶芳和
- 第35回 2020年03月30日
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1 島根県に酒の歴史あり――日本ワインもうひとつの起源の地
神話の国・島根県出雲のワイナリーを訪れた。春まだ浅い2月中旬であったが、田んぼの畔は草が青みを帯びていた。出雲は案外暖かいのであろうか。
1年前まで、島根県でワインが造られていることを知らなかった。博学多才に縁遠いというか、浅学非才の悲しさ。しかし、想い起せば、島根は神話の国、酒の歴史が古い地域である。島根県にもワインコンクールで金賞を取るワイナリーがある。
島根県は神話の国である。出雲市には酒造りの神である久斯之神(くすのかみ)を祀る佐香(さか)神社(通称松尾神社)があり、全国でも数少ない酒造りが許可されている珍しい神社である。日本書紀や出雲国風土記には古くから日本酒との深い関係が記されており、島根県は「日本酒発祥の地」と言われている(日本ブドウ・ワイン学会誌Vol.28,No.1,2017(株)島根ワイナリー社長岡良美、巻頭随想による)。
ワインについても、島根県は古い歴史がある。ブドウ栽培の歴史は古く、慶応年間(明治の直前)に浜田市で甲州を植えた記録がある。ワイン醸造は明治3年(1870年)に藤村雅蔵がフランス人の指導を受けてヤマブドウで赤ワインを試験醸造したという記録が残っている。島根県は山梨県と同様、「日本ワイン醸造の起源」といえよう(先述、日本ブドウ・ワイン学会誌)。
(株)島根ワイナリー(出雲市)を訪問した。島根経済連の子会社であり、農協系のワイナリーである。1957年創業。島根県では養蚕不況を経た桑園の転作作物としてブドウ栽培が奨励され、ビニール被覆・加温栽培(ハウス栽培)での早期出荷で全国有数のブドウ産地になった(現在もデラウェアの有名産地である)。ワイン醸造も、生食用出荷基準に満たない物の加工利用として始まり、以来、60年余の歴史がある。農協系の故、原料調達を巡る諸問題が鮮明に表面化してきた。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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