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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

イギリス(1) 欧州で最初に栽培を解禁しヘンプ産業の黎明期を支えた国


19世紀末にイギリスの植民地であるインドでは、本格的な学術調査に基づく『インド大麻委員会報告』において、「大麻=悪」という考え方が迷信であることが報告されたが、本国にその情報が広く共有されることはなかった。1925年の第二アヘン条約で初めて国際的な大麻規制が始まると、28年には英国内で全面的な栽培禁止となった。
イギリスでヘンプ栽培が解禁されたのは、それから65年経た93年のことである。欧州共同体(EC)時代の農業共通政策の補助金スキームの規則(EEC)No.1308/70の亜麻と大麻の項目を利用したものだった。欧州全体で認められた規則があるのに国が対応していないことを、ヘンプ・テクノロジー社の創業メンバーがイギリス内務省に交渉を迫ったのだ。
交渉の結果、補助金制度とEEC規則No.1164/89(低THC品種の栽培基準)に基づいた免許制度が整備されることとなった。同社は栽培および加工の免許を内務省から取得し、販売ルートを先駆的に開拓していった。
この一連の出来事によって、フランス、スペインなどの第二次世界大戦後に一度も禁止していなかった欧州の一部の国を除いて、初めてヘンプ栽培が解禁されたのである。その後、オランダ(94年)、オーストリア・ドイツ(ともに96年)、イタリア(02年)とヘンプ栽培を解禁する国が増えていった。

自動車や化粧品などの環境にやさしい話題商品に

ヘンプ・テクノロジー社は、ヘンプの繊維とオガラ(麻幹)を分離する廃棄物ゼロの一次加工システム(図1)を構築し、従来の紙パルプの需要以外の用途を開拓していった(表1)。とくにスポーツカーのメーカーである英国ロータス社の08年版ロータス・エコ・エリーゼは、ボディーパネル、スポイラー、シートなどの素材の一部にヘンプ素材を使い、使用する電気を屋根のソーラーパネルから供給するなど環境に配慮した仕様の車を発表し、大きな話題となった(図2)。
ヘンプ業界への貢献度も大きく、94年から年2回発行されたヘンプ産業の学術専門誌『インダストリアル・ヘンプ・ジャーナル』に協力し(図3)、00年に設立した業界団体のヨーロッパ産業用ヘンプ協会(EIHA)にも参画。40軒の農家と約1400haの栽培を手がけ、国内およびヨーロッパでの市場開拓に尽力した同社は、ヘンプ産業への一定の貢献を果たしたとして13年に廃業した。なお、前述のヘンプ専門誌は、09年以降は『ジャーナル・オブ・ナチュラルファイバーズ』に引き継がれている。

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