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新・農業経営者ルポ

発酵でコメに付加価値と新たな市場を


こうして、地域の農事組合法人、養鶏農家、農家民宿など、さまざまなプレーヤーと連携した循環の仕組みが回り始めた。ファーメンステーションを含む四者は「こめ、ひと、まわる、百年先も。」をキャッチフレーズに、「マイムマイム奥州」というグループを作った。消費者や取引先のメーカーなどを現地に招くイベントやツアーを共同で催している。

コンサルのはずが事業主体に

今年、循環型のシステムが評価され、国際連合工業開発機関(UNIDO)の東京事務所により、開発途上国・新興国の持続的な産業開発に資する優れた技術を紹介する「サステナブル技術普及プラットフォーム(STePP)」に登録された。順調に見える同社だけれども、事業が軌道に乗るまでは曲折があった。
「まさか自分がやることになるとは思わなかった」
2010年ごろからコンサルタントとしてプロジェクトに関わってきた酒井が、一転して事業主体になったのは13年。奥州市による実証実験の期限に達し、民間に事業を委ねることになったけれども、市内で事業を継承する人が現れなかったのだ。「じゃあ、やらせてください」と自ら手を挙げた。
コンサル会社だった同社で、装置と人を急きょ引き受けることになった。売り上げがなく、それまでに稼いだコンサル費を切り崩していく日々。このままでは会社がつぶれてしまう、何か売るものを作らなければと、石けんを製造しつつ、エタノールの製造販売許可を取った。化粧品も作り、シナモンなどの香りをつけたスプレーなども発売。自社製品が徐々に百貨店やセレクトショップに並ぶようになった。認知度が上がったことで、原料であるエタノール自体も売れるようになった。
「それは売れるんですか」
「事業性が見えない」
エタノールを化粧品や雑貨の原料にするというコンセプトに対し、こう言われることも多かった。潮目が変わったと感じるのはここ数年。国内でSDGs(持続可能な開発目標)への理解が進み、未利用資源を活用する循環型のビジネスが評価されるようになった。自社製品の付加価値をようやく理解してもらえるようになってきたという。
コメ以外の分野で循環型の仕組みを水平展開する試みも始めた。青森県はリンゴを使ったアルコール飲料であるシードルの製造が盛んだ。その搾りかすは保存が利かず、家畜のエサにしにくい。それを同社でエタノールの原料として発酵させ、リンゴの風味があるエタノールと、家畜の食い込みの良くなるエサを作る。コメから生まれた仕組みの応用の幅を、リンゴに限らず広げていくつもりだ。

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