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食の数だけ正義がある 明日も争いは終わらない

農業系デマの傾向と対策


でもちゃんと数字や単位を確認すれば、授乳中の赤ちゃんの尿から検出されたネオニコチノイドの濃度は1.5ppb。つまり15億分の1。小さじ1杯のネオニコを小学校のプールに薄めた濃度である。先程の高濃度のネオニコを与えてマウスに異常が出たという研究と比べれば、「たったそれだけならなおさら問題ない」となるはず。だがこれも「めちゃくちゃ少ない農薬が出た」の「農薬が出た」だけが抜き出されて拡散される。
いずれも数字や単位を確認すれば「問題のない」研究データも、悪意のあるインフルエンサーに拠って「問題がある」にすり替えられ、コアなファンはそれを検証するどころか、多くは中身も読まずにシェアしていく。
「家が石で造られるように、科学は事実を用いて作られる。しかし石の集積が家ではないように、事実の集積は科学ではない」(*2)。研究結果という科学的事実を引き出しても、論理的に組み立てられなかったり、悪意を持って組み立てられたならば、それは科学ではない。科学を扮ったゴミである。

誰がインフルエンサーになっているのか

ここで2つ注意すべきことがある。
1つは誰がこういった情報のインフルエンサーになるのかである。まず、それなりの経営で社会の一員として立脚している有機農家は闇雲に農薬が危険とか煽ったりしない。私自身そうだったが、実際に農村に入り、勉強し農業を知れば知るほど農薬や化学肥料の安全性や意義を冷静に評価できるようになる有機農家は多い。
さらに今どきは有機農家も「安全安心」というフックだけではコアなファンしか確保できない。広く顧客に信頼されるには、不安をバラ撒くことで安心の押し売りをする商法は不向きだし、不正確な情報を垂れ流すことの信用リスクも高い。
むしろ自分の野菜の魅力、「美味しい」「新鮮」「便利」「楽しい」など前向きな価値を出していく。他を貶めるのではなく、己の野菜を高めることによって経営を成り立たせるのが、今どきの一流有機農家なのである。
インフルエンサーになってるのは小さくてもコアなファンを持つことが目的の人たちである。
例えば有機農家や自然農法でも、生産量が少なく一般社会に売りだすほどの品質がなければ、他の農産物を貶めて相対的に自分の野菜の価値を高めざるを得ない。
反論することのない一部のコアな消費者を囲い込んでいくために、現代農業批判は充分有効な宣伝方法だ。また、農家に限らず一定の支持や売上、講演依頼・書籍売上があればいい野菜販売業者や農業資材業者、政治関係者なども、こういったインフルエンサーになり得る。

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