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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第16回 水田地帯に大規模なブドウ畑 消費者志向で生産性を追求(株)アルプス(長野県塩尻市)



■生産性の高い品種で低コストワインを製造
メルローの単収は10a当たり800kgから1t程度(欧州系は同じ)、棚栽培のブラッククイーンは2倍以上の2~2.5tである。
ブラッククイーン(日本品種)はもともとは生食用で、農家にとっては売り先がない品種であったが、松本平に残っていたのを見つけて、アルプスのワイン用に使うことにした。タンニンはそんなになく、渋くないが甘くもなく、コンコードとメルローの中間、欧州系に近いが日本独自の味がする品種である。
日本で生まれた品種であり、塩尻の気候に合っている。メルローは塩尻が全国一の産地であるが、欧州系でハンディがある。1ha当たり単収はメルローは8~10tである。これに対し、ブラッククイーンは20~25tである。価格はメルローの3分の2程度であるが、単収が高いので、1ha当たりの収入はメルローの2倍近くになる。
また、日本品種で日本の風土に合っており、病気が少なく、農薬使用量も半分で済み、年によるバラツキも少ない。収量の高さに加え、栽培管理コストが安いので、ワイン価格を安くできる。実際、ブラッククイーンで造るアルプスワインの価格は1500円である。これに対し、単収の少ないメルローは2000円だ(業界相場は3000円になる)(注)。
矢ヶ崎社長「ワインは店頭での消費者価格が2000円切ると売れ行きが良い。圧倒的に売れている。ブラッククイーンは1500円なので、ワンブランド10万本以上売れる」。このように、ビジネスの観点からすれば、生産性の高いブラッククイーンは有利である。社長のブラッククイーンに対する思い入れの理由が分かる。
矢ヶ崎社長は消費者第一主義である。「商売というのは、本来、お客様を頭に置くべき」「うちの価格は値ごろ感がある。シャルドネは1700円だ。業界は3000円だ」。そして「値ごろ感のあるワインを出すため、企業努力が必要」「コストが高いというハンディを乗り越えるには栽培、営業、ボトリング、全ての工程で、アタマを使ってコストダウンが必要」という。
日本では、高いワインを造るのが良いワイナリーという雰囲気がある。ワイナリーとしてのステータスが高いという評価である。矢ヶ崎社長はそういう風潮に対して、批判的である。「ブルゴーニュかぶれ。日本のワイナリーの欠点だ」と明言する。消費者ニーズに応えようとする経営姿勢を鮮明に表す一言だ。筆者も同感である。規模の利益を活かして誰でもが楽しめる価格のワインを出すことは企業の社会的貢献であるからだ(拙稿、現地ルポ「北海道ワイン論」本誌19年9月号、「オチガビワイナリー論」第4節、本誌20年3月号参照)。

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