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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第16回 水田地帯に大規模なブドウ畑 消費者志向で生産性を追求(株)アルプス(長野県塩尻市)


これまで、筆者は同社の消費者志向、生産性向上努力を強調してきたが、その成果は必ずしも業績に表れていない。何故か。
注:日本ワイナリー協会会員の日本ワインを製造している上位14社(全生産量の7割)を対象に算出。ワイン産業は情報開示が不足しており、これ以外の情報はない。

■美味しさと価格の乖離を突破する
日本ワイン業界には、高いワインを造るのが良いワイナリーと評価される風潮がある。そして、「製品差別化」がすごい。美味しさと価格の乖離が激しい(筆者はこうした風潮を日本ワイン産業の病理現象と捉える)。アルプスの「手頃な価格でワインを提供する」という企業努力は、こういう風潮の下ではなかなか効果を発揮できないのではないのか。
「自然派、小規模」を“製品差別化”に使うワイナリーが多いが、一定の規模があるからこそ、厳格な品質管理ができる。アルプスワインの製品差別化はこの点をもっと強調したほうがいいのではないか。
大規模であるからコストダウンが可能。小規模ワイナリーはコストが高いから、高い価格のワインしか造れないのであって、価格と美味しさの乖離が大きい。小規模=美味しいとは限らない。また、自己満足とごく一部の消費者を満足させるだけであって、地域貢献も小さい。
アルプスの一番の財産は、水田転換畑にブドウを栽培する技術だ(そういう発想が財産)。日本ワインの成長制約は原料不足であるが、アルプスは遊休地化した水田転換畑をブドウ園に活用できるので、この制約は比較的小さい。更なる規模拡大もできる。一番の活路はここにあるのかもしれない。
矢ヶ崎社長は「日本のワインの世界には、行き過ぎたクラフト原理主義みたいなものがある」と語る。この風潮をどう突破するか。不合理ではあるが、手ごわい相手であり、乗り越えるのは容易ではない。しかし、「大規模」であることの有利性を活かし消費者を味方にすることで、活路は開けるであろう。

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