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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
イギリス(2) 低炭素住宅「ヘンプハウス」の普及に向けた先駆的な取り組み
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第29回 2020年04月27日
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1993年に欧州で初めてヘンプの栽培を解禁したイギリス。その当初から課題に挙げられたのは、繊維を採った後に大量に発生するオガラ(麻幹)の有効活用だった。ヘンプの茎のうち、繊維が採れる靭皮部は約3割で、残りの7割はオガラが採れる木質部で構成されるからだ。
この課題解決に当たった一人が、アイルランド人のスティーブ・アレン氏である。97年にこの分野に参入し、フランスの古民家の修復材の一部で使われ始めていた「ヘンプクリート」に注目した。ヘンプクリートとは、「ヘンプ」と「コンクリート」を組み合わせた造語で、ヘンプ由来のオガラと石灰、水を混合したモルタル建材の一種だ。アレン氏はフランス産の水硬性石灰に、オガラを長さ1~3cmのチップ状に粉砕して用いた。既存の住宅用素材よりも軽くて、ヘンプ素材を使うことで高断熱性、吸音性、蓄熱性、調湿性、意匠性、耐火性、耐害虫性、低環境負荷性に優れた快適な家となる。これらの機能は、ヘンプのオガラが細かい穴を有する多孔質であることによる。ヘンプクリートは、木造や鉄骨造のどちらの住宅にも壁材、屋根、天井裏、床材、間仕切り、左官材のあらゆるところで利用できる。
ヘンプクリートを用いた「ヘンプハウス」を欧州各地で建築したアレン氏は、その経験をもとに05年に世界で初めてのヘンプハウスの建築法を詳しく解説したカラー本『Hemp with Building』を出版した。同書は12年に第二版が発売された(図1)。
ヘンプクリートを用いた「ヘンプハウス」を欧州各地で建築したアレン氏は、その経験をもとに05年に世界で初めてのヘンプハウスの建築法を詳しく解説したカラー本『Hemp with Building』を出版した。同書は12年に第二版が発売された(図1)。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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