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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
イギリス(2) 低炭素住宅「ヘンプハウス」の普及に向けた先駆的な取り組み
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第29回 2020年04月27日
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また、アレン氏は、ヘンプハウスの展開を広げる目的で、ヨーロッパ産業用ヘンプ協会(EIHA)とは別に、09年に国際ヘンプ建築協会というヘンプハウス専門のグループを設立した。年1回開催されるシンポジウムやワークショップは、建築家や施工者、材料メーカー、ユーザーに情報交換および交流の場を提供してきた。地元のイギリスだけでなく、チェコやスペイン、リトアニア、ドイツ、アメリカ、スウェーデン、スイス、フランス、ネパール、カナダなどの世界各国で開催され、原料調達の体制や建築基準、商慣習の違いに即した地域化(ローカライズ)を推進している。
ヘンプハウスの二酸化炭素削減効果
ヘンプクリートの工法は大きく3つに分類され、ヘンプハウスの外観は工法によって異なる。
昔ながらの伝統的な「版築工法」では、組んだ型枠の中にヘンプクリートを流し込み、木のたたき棒などで、固く突き固める(図2)。12~24時間後に型枠を外すと地層状の壁ができる。セルフビルドやワークショップなどの人件費がかからない施工で、70立方m以下の小さなプロジェクトに向いている。
一方の「吹き付け工法」は、石灰とオガラをミキサーで混合したものを吹き付けノズルの手前で水を加えて、吹き付けて壁をつくっていく工法で、70立方m以上の大きなプロジェクトに向いている(図3)。
加えて、「ブロック工法」(本誌2019年8月号参照)はヘンプクリートのブロックを予め工場で製作し、建築現場で積みあげる。最近、ベルギ―で実用化され、普及が期待されている。
総床面積52平方mのモデル住宅の場合、245袋分のオガラ(1袋200リットル)と石灰10.8tを配合したヘンプクリートだと、壁厚300mmで49立方mの材料が必要になる。これは1haから収穫できるオガラ5t分に相当する。なお、壁厚が300mmと分厚いのは、イギリスの建築規制が定める熱の伝えやすさを表す熱貫流率の基準(0.30W/平方mK以上)を満たすためである。密度330kg/立方mのヘンプクリートを吹き付け工法で施工すると、1立方m当たり110kgの二酸化炭素削減効果があり、前述のモデル住宅1棟では5.4t分となる。
環境・食糧・農村地域省が低炭素住宅の建設を支援
欧州では、建築物のエネルギー性能に係る欧州指令(EPBD)が03年に発効され、各国が06年までに国内法の整備をしなければならなくなった。イギリスでは、建築産業が温室効果ガスの10%を排出し、流通するすべての材料の50%を使用しているため、低炭素で再生可能な家づくりが求められたのである。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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