記事閲覧
【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
イギリス(2) 低炭素住宅「ヘンプハウス」の普及に向けた先駆的な取り組み
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第29回 2020年04月27日
- この記事をPDFで読む
そこで、環境・食糧・農村地域省(Defra)が注目したのが、バイオマス作物だ。なかでも、生育に何十年もかかる木材ではなく、ヤナギ、ススキ、ヘンプのような短期間で生育する非食料作物に焦点が当てられた。同省から助成を受けた政府系研究機関の国立非食料作物センター(NNFCC)は、08年にヘンプクリートの研究レポートを発行した。世界に先駆けて義務化を図った「ゼロ・カーボン住宅」の対象として、建材分野で実践例のあったヘンプクリートが研究対象となったのである。建築家、工務店、建材会社などにインタビューを行ない、建築工学、ライフサイクルアセスメント(LCA)などの専門家チームを編成し、仕様および熱性能などの問題を検討した。
こうした評価・検討に基づき、イギリス政府は09~10年に283棟の低炭素住宅の建設を支援し、ヘンプハウスもその一部で7万5000ポンド(約1000万円)の支援を受けた。低炭素住宅は二酸化炭素削減比により5段階にレベル分けされ(表1)、支援を受けてレベル4のヘンプハウスを施工したのがBRE社である。同社は、1928年創業の政府系の住宅研究開発会社で、01年にイングランド東部のへーバリルの町に社会住宅開発の一環として建てられた18棟のうち2棟を実験的にヘンプハウスとした。同社によれば、ヘンプクリートを使うと従来のレンガブロックの家よりも暖房費を抑えられ、居住者は最大30%のエネルギー消費コストを削減できることが明らかになった。
イギリスは低炭素住宅の推進・普及を政策に掲げ、民間と政府がそれぞれヘンプハウスのさらなる研究を先駆的に行なっている。
会員の方はここからログイン

赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
ランキング
WHAT'S NEW
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2020/12/17)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2020/08/07)
