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新・農業経営者ルポ

多様性を重視した胡蝶蘭の経営

胡蝶蘭を栽培する経営体は大輪の白一色でそろえるところが多い。本来、その魅力はもっと多様であるはず――。そんな思いから多種類を作るのは埼玉県川越市の(有)森田洋蘭園だ。品種改良から栽培、商品の企画や営業、物流などを自社で一貫して手がけることで、幅広い場面で喜ばれる価値を提供している。 文・写真/窪田新之助、写真提供/(有)森田洋蘭園、中村商事

何でもやってみる

JR大宮駅を出た埼京線の車窓がしばらくすると水田地帯に変わったのは意外だった。ずっと市街地が続くと思っていたからだ。川越駅まであと一駅という南古谷駅で降り、車で数分して着いた森田洋蘭園もまた水田と住宅が混在する場所の一角にある。
訪れるのは半年前に続いて2回目。ハウスに入ると、老若男女問わず大勢の従業員とともに、会長の森田康雄も作業着姿で忙しそうにしていた。といって花の手入れをしているのではない。初訪問時に建て直すと聞いていたハウスの外装が完成し、森田自らが工具を手に内装の仕上げに入っているところだった。
後ほど述べるように、森田は品種改良をしたり、創業してからしばらくして仲間とともにシステム会社で販売管理や財務システムを開発したりしてきた。その後もメーカーと共同でハウスの環境制御システムの開発を手がけるなど、興味が湧いたら何でもやってみる人である。かつてはハウスの施工まで自分でこなしたそうだ。

50aで年間12万株を生産

森田が胡蝶蘭の生産に取りかかったのは1971年。実家は周囲と同じく稲作をしていたが、地元の川越農業高校を卒業して家業に入るにあたり、「年間通して仕事を作り、企業的な経営をしたかった」ため、周年栽培できる品目を探した。「日本が経済成長している中で付加価値をなるべく高くできるものを作ろう」ということで目を付けたのが蘭だった。
ただ、当時は蘭の中でも胡蝶蘭を作っている農家は全国的にもわずかで、「市場に出回っていないほどだった」という。そんなマイナーな花を作り始めたのは、ほかの蘭科の植物よりも初期投資が少なく、投資した分の回収が早く済むから。当時は簡単に増殖できるクローン苗がまだ普及していなかった時代である。そのうちに資金を貯め、カトレアの栽培に注力するつもりでいた。ところが、作っているうちに胡蝶蘭の人気が高まったことから、カトレアよりも胡蝶蘭を中心とした経営になっていく。
現在は60aほどのハウスで年間12万株を生産している。市場に出荷するほか、生花店への直接配達やネット通販を手がける販売代理店を通して個人や企業に直接届けている。生花店が店頭で受注した分の宅配を代行するサービスも提供している。このため、最近の物流環境の悪化は死活問題だ。
「運送会社のサービスレベルが下がっていることがとにかく問題ですね。時間の指定ができないとか都内に配送するのに2日かかるとか、あるいは大きい荷物は持っていかないとか。もはや値段云々ではなくなってきた」と森田。
そこで2017年に自社便を用意し、専属のドライバーを雇い入れた。近隣で同じく胡蝶蘭を生産する農家6戸の分も合わせて共同で東京都(奥多摩を除く)とその近県の企業や個人に配送している。自社便の割合は3~4割。森田は「小さい荷物だと大手の運送業者に頼んだほうが安いけど、大きい荷物はうちのほうが安い。自社便を用意したことで全体的には経費の節減になったね」と喜ぶ。

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