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新・農業経営者ルポ

多様性を重視した胡蝶蘭の経営



配車と経路の設定を自動化へ

気になるのは配車や経路の設定に手間がかかるのではないかということだ。表計算ソフトやグーグルマップに手入力しながら作成しているので、そこで自動化するシステムを開発し、試している最中だった。花のギフトに関わる生産者や販売店、依頼主、届け先にまたがる情報を一括で管理できるシステムで、配車情報をグルーピングして配車作業を大幅に簡略化し、グーグルマップで自動的に配送する順番と経路を示してくれるという。配達が完了した段階でスマートフォンのボタンを押せば、発注元に配達完了報告を自動で知らせてくれる。
「ネット通販のお客さんは注文したら明日とか明後日には届くと思ってますけど、それは従来のお花の物流環境では難しくなってきてますよね。こちらから花屋さんに卸して、花屋さんが発送していてはとても間に合わない。それに花屋さんは鉢物ばかり扱っているわけではないですから、梱包に手間もかかる。そう考えると一番合理的なのは、現物を持っているところ、つまり生産者から直接配送すること。時間に関しても鮮度に関してもそれがベストです」
森田はこう語っていた。もちろん、それができるのは胡蝶蘭が切り花と異なり、生産者で最終的な商品に仕上げられるからだ。
今回の取材でその後の進捗を聞くと、近隣で同じく胡蝶蘭を生産して共同配送している農家にもこのシステムを利用してもらっているという。運用しながら使い勝手を良くしていくそうだ。

人が作業しやすいハウスの環境づくり

「何でもやる」という発想で次々に経営を改善していく森田洋蘭園にとって目下の課題は何だろう。健一郎は「生産性を上げることを中心に回ってきた一方、人が作業をしにくかった」とずばり。ハウスや事務所の構造は単位面積当たりの生産量を増やすことを前提としている一方、動線が整備されていないのだ。ハウスでは胡蝶蘭の鉢が棟と棟の間を行ったりきたりしたり、事務所では複数の運送業者が同時に到着して荷渡しの現場が混乱したりしている。
新たに施工するハウスはそうした事態を解消する役割を背負っている。12棟あるハウスの端にあるこのハウスは、もともと4棟だったのを1棟にまとめた。ほかのハウスで栽培して開花させた鉢はすべてこのハウスに運んでくるような動線を作る。
地面はほかのハウスが土なのに対して、このハウスだけコンクリート。両側にはベンチを固定して等間隔で設置する一方、中央はとりあえずまるっきり空けてしまう。そこにはキャスター付きの台車を置いていく。

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