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国産バイオマス肥料・汚泥肥料で「勇気農業」にチャレンジ


下水汚泥の主成分は窒素を含むタンパク質であるため、放置すれば短時間で分解し、下水汚泥独特の悪臭を放つことになる。そこで、さまざまな方法で下水汚泥を加工して、再利用しやすくした資材が汚泥肥料である。従来、下水汚泥の緑化資材としての利用方法は、主に堆肥化であった。家畜ふん堆肥と区別化するためか、堆肥ではなくコンポストと呼ばれていた。コンポスト(compost)は堆肥の英語名であるので、本来であれば同意語であるはずだが、家畜排せつ物やバークなどを原料とする堆肥は「堆肥」で、下水汚泥を原料とする堆肥は「下水汚泥コンポスト」あるいは単に「コンポスト」と、農業生産現場では全く異なる資材として取り扱われてきた。
ただし、両資材の用途はどちらも土づくりのための有機物補給源で、肥料というより土壌改良資材であった。そのため、施用量は10a当たり数tにもおよんだ。家畜ふん堆肥より安価であったため、主に集約的な露地野菜産地で腐植を増やすための有機物資材として多く使われてきた。

【(2)汚泥肥料の種類とその製法】

1999年には、肥料取締法の改正によりそれまで特殊肥料の「堆肥」として扱われてきたコンポストが「汚泥肥料」という普通肥料に分類されることになった。ただし、汚泥肥料にはそれ以外の普通肥料のような肥料成分の最少量を保証する保証値がなく、含有を許される有害成分の最大量が定められている。その種類と最大量は、ひ素0.005%、カドミウム0.0005%、水銀
0.0002%、ニッケル0.03%、クロム0.05%、鉛0.01%である。
かつて、下水汚泥コンポストといえば「臭い」と「有害元素」が大きな課題であった。しかし、最近では、排水規制などの関係で下水中に含まれるカドミウムなど有害元素濃度は著しく低下している。また、肥料登録を受けた汚泥肥料を適正に活用すれば、有害金属は問題とならない。臭気問題についても下水汚泥の堆肥化や乾燥方法の改善により著しく緩和されている。
肥料取締法では、下水汚泥を原料とする汚泥肥料として5種類の公定規格が設けられているが、全国で入手できる汚泥肥料は主に汚泥発酵肥料で、その他に下水汚泥肥料・し尿汚泥肥料・工業汚泥肥料・混合汚泥肥料・焼成汚泥肥料などがある。

(1)汚泥発酵肥料 
汚泥発酵肥料とは、従来からコンポストと呼ばれてきた資材で、下水汚泥に木質チップやおがくず、米ぬかなどの水分調節材を混ぜて堆肥化した汚泥肥料である。堆肥化過程では、微生物による呼吸熱で70~100℃にまで品温が上昇するため、雑草の種子や病原菌も死滅し、悪臭源となる成分も分解されるので、完熟すれば悪臭が大幅に緩和される。全国各地の多くの下水処理場で作られているので最も入手しやすく、2016年の調査によると、汚泥肥料の年間利用量約32万tの75%を汚泥発酵肥料が占めている。

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