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国産バイオマス肥料・汚泥肥料で「勇気農業」にチャレンジ


これらリン酸肥料は下水汚泥焼却灰から化学的あるいは物理的にリン酸を分離した肥料であるため重金属問題は完璧に解消される。その一方で、MAPやリン酸カルシウムのように、リン酸塩を化学的に分離した肥料では、下水汚泥に含まれるリン酸以外の肥料成分まで除去されてしまう。
その点、熔成汚泥灰複合肥料では、ケイ酸やマグネシウムなども残留するので、ケイ酸を必要とする水田用肥料としては他の下水系リン酸肥料より優れていた。ただし、製造に多額の費用を要するため現状でも実用化には至っていない。
汚泥肥料には分類されないこれらの国産リサイクル肥料は、下水中のリン酸資源を有効活用できるすばらしい肥料ではあるが、有機物をまったく含まない無機質肥料で、製造に経費を要する。その点、汚泥肥料には、大量の有機物が含まれ、おまけに窒素とリン酸も含まれている。これを肥料として使わない手はなかろう。
繰り返すが、最近の堆肥化や乾燥技術の進歩により、かつてのコンポストとは一線を画した新しい肥料が各地の下水処理場で作られている。土壌改良資材として大量施用していたコンポストから脱却して、有機物と窒素・リン酸を補給できる「肥料」として汚泥肥料を活用しよう。
下水汚泥を主原料とする肥料の安全・安心性を確認し、下水汚泥の農業利用を促進する目的で、2009年3月に(公財)日本下水道新技術機構から「下水道由来肥料の利活用マニュアル‐施用量をどのように決めるか‐」が発表された。
筆者は、そのマニュアル作成時の評価委員の一人として参画したので、その概要を以下の4と、5の(1)(2)で紹介する。

4 窒素とリン酸肥料として有望な汚泥肥料

【(1)栽培試験に用いた汚泥肥料の性質】

1930年に名古屋でわが国初の活性汚泥法による下水処理場が建設された。その当時から下水汚泥が肥料として有効であることが報告されていた。その後、今日まで下水汚泥中の窒素とリン酸の肥効や、有害成分の挙動などに関する実に多くの研究が行われてきた。この間、下水処理方法や使用する凝集剤の種類の違いなどで下水汚泥の性質が変化してきた。
また、農業利用方法も従来の土壌改良資材的な多量施用から肥料としての利用へと変わりつつある。そこで、2017年に「下水道由来肥料の利活用マニュアル」作成の一環として、汚泥発酵肥料3点、乾燥処理による下水汚泥肥料1点を入手して、それらの窒素およびリン酸肥料としての施用効果について検討した。いずれの汚泥肥料も最新の堆肥化あるいは乾燥化設備で製造されたもので、全量が農業利用されている。

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