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ガラス温室内で52日間栽培した後の4種汚泥肥料区と化学肥料区の三要素25kg/10a区(標準区)の生育と窒素・リン酸吸収量は写真3のとおりである。汚泥肥料T、A、S区は化学肥料標準区と同等あるいはそれ以上の生育を示し、汚泥肥料1t/10aで窒素とリン酸を十分賄えることが判明した。ただし、汚泥肥料Mは木質チップを混合した堆肥で、前ページ図1のように窒素無機化率が低いため、化学肥料区にはおよばなかった。汚泥肥料区のリン酸吸収量は化学肥料区を50%程度上回り、汚泥肥料中のリン酸の肥効が高いことが明らかになった。
この栽培試験結果から汚泥肥料の化学肥料代替率を算定したが、ここでは結論のみとするので、詳細については(公社)日本下水道協会発行の「再生と利用2019 Vol.43 No.160」を参照頂きたい。
その結論は次のとおりである。汚泥肥料は化学肥料の代替肥料として極めて有望で、窒素の化学肥料代替率は汚泥肥料4点中3点でほぼ50%であった。化学肥料代替率がその2分の1程度と低かった汚泥堆肥Mは、堆肥化原料として大量の木質チップを混ぜているためと思われる。また、汚泥肥料中のリン酸の化学肥料代替率はほぼ100%と見なしてよい。
5 汚泥肥料の活用事例
【(1)水田での汚泥肥料活用(秋田県大仙市)
汚泥肥料Aを秋田県大仙市の水田で活用した事例を紹介する。隣接する2枚の水田(面積:各30a)を汚泥肥料A区と慣行区とし、両区の施肥設計を表3とした。試験水田の土壌診断分析の結果、図2のように酸性が強く、遊離酸化鉄含有量が少なめであったので、両区に転炉スラグを200kg/10a施用した。汚泥肥料Aの窒素代替率を50%と見なして、慣行区の窒素施肥量の倍量となるよう汚泥肥料Aを500kg/10a施用した。慣行区の基肥・追肥は化学肥料を原料とする配合肥料である。この施用量で、カリ量は両区でほぼ一致するが、リン酸は慣行区の約5倍(43kg/10a)となる。しかし、土壌中の可給態リン酸が5mg/100gと欠乏気味のため妥当な施肥である。なお、本試験実施者の意向で汚泥肥料区には追肥として微生物資材を施用した。
各試験区内3ヶ所で坪刈りによる生育・収量調査を行った結果の平均値は表4のとおりで、両区間に顕著な相違は認められずほぼ同等と判断される。すなわち、水田での汚泥肥料による化学肥料代替効果が確認された。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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