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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第17回 金銀賞連続7回のワイナリー家族経営で手作りの味醸す 源作印(有)秩父ワイン(埼玉県小鹿野町)
- 評論家 叶芳和
- 第37回 2020年05月25日
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2 金賞ワイン連続受賞――丹精込めた醸造プロセスの勝利
小鹿野町は2005年10月、旧小鹿野町(人口1万2000人)と両神村(人口3000人)が合併してできた町である(人口は合併当時)。(有)秩父ワインは小鹿野町両神薄にある。つまり、旧両神村であり、一番の山奥だ。山々に囲まれた場所だ。そこでワインが造られている。
「源作印ワイン」は、日本ワインコンクールで「連続7回」金賞に輝いている(2015年だけ銀賞)。「源作印 甲州シュール・リー」ブランドだ。このほか、銅賞も多い(「源作ワインGKT」ブランド)。
秩父はブドウ栽培にとって、テロワールがいいとは言い難い。雨が多く、日照時間も短い地で(表2参照)、なぜ「7回」も金賞が取れるのか。興味を持った。
秩父ワインの生産規模は約15万本である。うち国産ブドウ100%の日本ワイン7万3000本、輸入ワイン(チリ等)とブレンドした国内製造ワイン7~8万本。日本ワインの規模7万余は、業界50位以内に入ろう。
しかし、極めて小さいワイナリーである。事務部門は家族だけ、工場も小さく、全従業員10人である。4月中旬の訪問であり、工場現場は瓶詰をしていたが、ボトリングの速度は1時間当たり1300本とゆっくりだ(注:例えば業界トップクラスのアルプスワインの速度は7000本〈本誌前号〉、北海道ワインは4000本〈19年9月号〉参照)。
原料の調達は、自社畑2ha、購入ブドウ100tである。日本ワインの生産は7万3000本であるから、ブドウは70tで足りる。残りは輸入ワイン(濃縮ジュースではない)とブレンドして国内製造ワインを7~8万本造っている(「源作づくり」ブランド)。購入ブドウは山梨県北部(北杜市か)のJAから購入している。100tの内訳は、白(主に甲州)80t、赤(ベーリーA)20tである。
醸造工場近くに、87年前の創業当初からのブドウ園がある。山の斜面を想像していたが、平地だった。源作じいさんが始めたときは1反5畝であったが、今は50aに拡大している(もっと離れたところにも1.5ha新設畑あり)。イノシシ対策で、金網で囲ってある。圃場は二つに分かれているが、最初からの畑は今はメルローとカベルネ・ソーヴィニヨンが植えられている(当初はマスカット・ベーリーA)。長野県小諸市のマンズワインを視察して、外国品種に変えようと考え、2000年に改植した。自社畑は欧州系品種に変えた。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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