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【新・農業経営者ルポ】
レモンを手にしたら、レモネードを作れ
- 河合果樹園 代表 河合浩樹
- 第191回 2020年06月29日
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天敵昆虫を使いこなす
「じつは加工品を始めたんですよ」
7年ぶりのインタビューを始めて間もなく、目の前の人が表情明るく発した一言は筆者にとっては意外だった。
河合は土着の天敵昆虫の助けを借りながら、農薬を一切使わずにレモンを栽培している。主に活躍するのは三種類。コクロヒメテントウはアブラムシを、べダリアテントウはカイガラムシを、カマキリはあらゆる虫を退治してくれる。二種類のテントウムシは自然に発生する。一方、カマキリはハウスの外で卵や産卵前の雌を見つけたら、取ってハウスに入れておく。
レモンは地元のスーパーがばら売りするほか、自身のサイトでも箱詰めを通信販売している。2kg箱定数詰め(12~18個)の販売価格(送料別)は年内どりのグリーンレモンなら2500円、年明けに収穫する完熟して黄色のフルーツレモンなら2600円(いずれも税別)。前回の取材では、これらは収穫して1カ月以内にすべてが予約で埋まってしまうということだった。今年も新型コロナウイルスの影響が出る前にすべて売り切った。
人気の理由の一つは、無農薬で皮ごと安心して食べられるから。実ごと口にすれば、搾った果汁だけよりも5倍の栄養成分を摂取できるという。それに、今や食と美容や健康との関係が騒がれる時代。それらに気を使う人々が次々に買い求める。
だから、青果物だけでも需要に追いついていないくらいで、ほかに回す余裕はなかったはず。それなのになぜ加工品を造り始めたのか。
きっかけは外観の悪化
「温暖化で以前にはなかった病気が発生して、外観が悪いのが結構出てくるようになったんです」
河合はこう振り返る。しかも、「いろんな病気が発生しているんですが、同定できないですね。これまでの無農薬の防除技術では対策が追いつかなくなっています」とのこと。
正体不明の病気に侵されて外観の悪いレモンが多く生じるようになっている。ただ、無農薬で栽培したレモンに変わりはない。
そこで加工品を造ることにした。思いついたのは「レモンウォーター」。後ほど紹介する「初恋レモンプロジェクト」という有志の組織で提案すると、参加者から「それってつまりレモネードですよね」と返ってきた。
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河合浩樹 カワイヒロキ
河合果樹園
代表
1962年、愛知県豊橋市生まれ。静岡大学農学部を卒業後、家業に入る。経営面積は2.2ha。うち1.7haは露地、0.5haはハウス。2008年度に第14回全国環境保全型農業推進コンクールで農林水産大臣賞を受賞。18年度に第48回日本農業賞の食の架け橋の部大賞を受賞。著書に『虫たちと作った世界に一つだけのレモン』(朝日新聞出版)がある。
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