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特集

オンライン市場が目指す農産物流通


「なぜ赤字になるのかと考えて、ようやく物流コストの負担が大きいからだと気づいた。もしかしたら、いろんな人たちが物流の課題を抱えているのではないかと思った」
長谷川氏が付き合いのある市場の仲卸業者や八百屋、スーパー、外食チェーンなどに聞いてみると、やはり皆、同じような悩みを抱えていた。地元の農産物を仕入れたいと思っても、生産者から宅配便で直送されると、商品の野菜と同じぐらい物流コストがかかるというのだ。
「物流コストが地産地消のための直売のネックになっている」
そこで、静岡県の青果流通に関わる人々が集まり、皆で課題を解決していこうと協議会を立ち上げた。そこで話し合われたのが、ミルクラン方式を導入できないかという案だ。ミルクラン方式は、乳業メーカーが各牧場を巡回しながら生乳を集荷する輸送方式である。さまざまな検討を重ね、いまのやさいバスの形をつくり上げていった。
16年から17年にかけての半年間、やさいバスの仕組みがうまく稼働するかどうか、静岡県で実証実験をした。静岡県は西部に生産者が多く、東部に惣菜会社や食品加工会社が多い。そこで、西部を巡るトラックで青果を集荷し、一旦、菊川市のエムスクエア・ラボの拠点で別のトラックに積み替え、東部を巡るトラックで実需者に配送するというルートをつくった。やさいバスは実証実験に参加した利用者たちに好評で、実験後もそのまま継続することになった。17年3月に物流会社の鈴与と協力してやさいバスを法人化し、活動を本格化した。

【生産者と実需者がつながる強さ】

長谷川氏らは、やさいバスのシステムをつくってまで、なぜ地産地消を目指してきたのだろう。
「地産地消が行きつく先は顔が見えるということだと思う。卸売市場の流通では、量や価格、産地の情報しか見えない。そこで、生産者と購買者を直接つなげようと考えた。やさいバスを始める前から、こだわりのある農産物を扱いたいという飲食店には、生産現場の畑を見てもらい、どんな畑で、どんな人が、どういうこだわりでつくっているのかを理解してもらいたいと活動してきた」
生産者と実需者が直接つながることによって、飲食店は来店客に畑の様子や生産者の人となりやこだわりを伝えながら料理を提供することができる。「熱量が変わる」と長谷川氏は言う。事実、情報を伝えながら提供することにより客の評価が上がったり、店の売上が上がったりする事例も現れてきている。生産者にとっても、自分がつくった農産物を誰がどのように使用するのかわかり、適正な価格で販売することができる。

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