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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第18回 ぶどう名人が移住者(人材)を呼ぶワイン文化育つ産地づくり (株)信州たかやまワイナリー(長野県高山村)

高山村はテロワール(自然環境)の良さとぶどう名人の存在で移住者が増え、ブドウの品質と供給力が高く、大手ワインメーカーが高山村詣でをしている。一方、村の中にもワイナリー開設が増え、標高差450mを活かしたワイン造りで、日本一のワイン産地を目指している。

1 大手ワインメーカーが高山村詣で--成長の予感がする

サントリーも、メルシャンも、ココファームも、といった大手ワインメーカーが挙(こぞ)って高山村のブドウを求め、そのブドウで造ったワインが次々と賞をもらっている。ブドウ生産者は県外から移住者が集まってくる。村の内にも、ワイナリー新設が増えた。高山村には、ブドウ農家を次々と誕生させ、ワイナリーも次々生まれる、それを可能にする何かがある。
表1、表2に示すように、高山村のブドウを原料に使ったワインが、次々と内外のワインコンクールで金賞を獲得している。日本のワインコンクールでは、シャルドネ種で造ったワインがコンクール第1回の2003年に銀賞を受賞したのを皮切りに、04年金賞、05年金賞と立て続けに受賞した。近年も連続受賞している。
国際コンクールでは、01年リュブリアーナ国際ワインコンクール金賞(開催地スロベニア)を皮切りに、ブルゴーニュ、ボルドー、ロンドン、パリで開催された国際コンクールで数々の金銀賞を受賞した(表2はシャトー・メルシャン・ブランド受賞分のみ掲載)。
こうしたことから、高山村のブドウ(シャルドネ)の品質の良さは、日本ワイン業界では知らない者はいないほどだ。じつはこの金銀賞シャルドネの生産者は25年前、村外(中野市)から移住してきた佐藤宗一・明夫親子である。ぶどう作り名人として佐藤宗一氏は名声を博し、今やカリスマ的存在のようだ。
当初、筆者は本稿のタイトルを「日本一のテロワールが移住者を呼ぶ」としようと考えた。しかし、ワイン産地のテロワール比較の作業を進めていくと、高山村が特段優れているとは言えないことに気づいた(標高の高い福井原地区は北海道余市に似ているが、他の地区は優良な他産地並みである)。そこでテロワールではなく、ぶどう名人の存在が移住者を呼んでいるという仮説に変えた。
高山村は高品質のブドウの供給力が大きく、ワイン用ブドウの県外移出地になっている。村内にワイナリーの新設が増えてきたので、今後はぶどうワイン産業複合体として発展し、近い将来、日本を代表するワイン産地を形成するのではないか。成長の予感がする。

2 県境を越えた高品質ブドウの供給基地--佐藤宗一氏には「発展の思想」がある

ワイン業界では高山村は良質なブドウの産地として有名である。しかし、一般には「高山」というと、飛騨高山(岐阜県高山市)と間違えられる。また、山を越えた群馬県側にも吾妻郡高山村がある。筆者がここで取り上げているのは、長野県北部、信州の高山である。長野市の東北に位置する長野県上高井郡高山村である。志賀高原の西南にある。じつは筆者も、ワイン産業研究の前、1年前までは知らなかった。

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