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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第18回 ぶどう名人が移住者(人材)を呼ぶワイン文化育つ産地づくり (株)信州たかやまワイナリー(長野県高山村)
- 評論家 叶芳和
- 第38回 2020年06月29日
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高山村(人口6600人)は、千曲川右岸に位置し、須坂市、小布施町と隣接している。中野市を含めてこの一帯は果樹産地である。農業産出額に占める果実の割合は、須坂市87%、小布施町84%、高山村82%(長野県27%、全国9%)と、果実に特化した農業である。リンゴが多い。
佐藤宗一氏(1946年生)は25年前、中野市から移住してきた。その前はシャトー・メルシャンと契約し、中野市でワイン用ブドウを栽培していた(40年前から)。しかし、中野市では良いブドウができないので、水はけの良さを求めて移住してきた。農業委員会を通して、日滝原(ひたきはら)地区で須坂地籍1.5ha、高山地籍1.5haを借地した(高山村におけるワイン用ブドウ栽培は佐藤宗一氏が初めて。1996年)。現在は15年前に開設した日滝原工業団地東にある角藤農園(8.5ha)でブドウ栽培を行なっている。移住当初からの土地は息子・佐藤明夫氏が経営を継承している。
■1人当たり2ha目標規模拡大による経済効率目指す
15年前、当時の久保田勝士村長は表1、表2に示した佐藤氏のブドウ栽培の実績を評価し、「このままでは高山村はつぶれる。高山村をワインの地にしてくれ。頼む」と言った。当時、角藤農園となる土地は荒廃地であったが、久保田村長が土地所有者である建設業の(株)角藤に「佐藤さんにブドウやらせてくれ」と提案し(2004年)、角藤が自己資金で再整備し、ブドウ畑に変えた(06年開設、株式会社の農業参入県内第1号)。高山村におけるワイン用ブドウ栽培の先駆的存在である。佐藤宗一氏は角藤農園(株)高山農場長として、すべてを任されている。
角藤農園は高山村の西側、須坂市に近く、標高は比較的低く450m。ひと続きの一枚8.5haの広々とした圃場が目を引く。松川渓谷の扇状地にあり、土壌は砂礫で水はけが良い。シャルドネ、ソービニヨン・ブラン、カベルネソービニヨン、メルロー、シラーの5品種を栽培している。欧州系品種であり、当然、垣根栽培である(当初はピノ・ノワールも栽培したが、標高が低く暑いので品質の良いのが穫れず止めた)。
8.5haで収穫量は80~100t。10a当たり単収は1t前後である。出荷先が注目される。
小布施ワイナリー(小布施町)50%
ココファームワイナリー(栃木県)30%
岩の原葡萄園(新潟県)
サドヤ(山梨県甲府)
著名なワインメーカーばかりである。しかも村外。引く手あまたなのは品質の高さと供給力が大きいからであろう。高山村内のワイナリーには出荷していない。価格は1kg350~400円。樹齢が安定したものは400円と高い。10a当たり粗収入は35~40万円である。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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