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土門「辛」聞

“冬のお化け”話で煽る種苗法改正反対派に根拠なし

この通常国会で通過するものと思っていた種苗法改正案、国会でのゴタゴタで成立が見送られた。 改正案は、優良品種の海外への不正流出を食い止める目的がある。国産農産物の輸出増強につながる法改正だけに、臨時国会での成立は確実だ。改正内容も全会一致の成立に相応しい。
仕切り直しの時間を利用して、改正案の意義を再確認しておきたい。同時に、法案に反対する少数勢力の主張にも耳を傾けてみよう。巷間に流布する「自家増殖は農民固有の権利」なる説だ。この説に基づく反対に果たして根拠はあるのか。

政策選択の判断ミスが海外流出をもたらした

種苗法改正の意図は、実にシンプル。法改正に伴い農水省知財課がこの3月に作成した「種苗法の一部を改正する法律案について」(法案説明文書)が分かりやすい。
「日本で開発されたブドウやイチゴなどの優良品種が海外に流出し、第三国に輸出・産地化される事例があります。また、農業者が増殖したサクランボ品種が無断でオーストラリアの農家に譲渡され、産地化された事例もあります。このようなことにより、国内で品種開発が滞ることも懸念されるので、より実効的に新品種を保護する法改正が必要と考えています」
和牛の精液や受精卵の海外への持ち出しもまったく同じ性質の問題だった。こちらは、この4月に家畜改良増殖法と家畜遺伝資源不正競争防止法の法改正で対応。罰金を強化した。悪質な場合は、個人1000万円以下、法人3億円以下とした。この法改正で不正持ち出しに初めて効果的な規制をかけることができた。
種苗法改正は、家畜改良増殖法の改正を追うものだが、いずれも改正のタイミングは遅すぎた。
政府が、農林水産物・食品の輸出強化を呼びかけたのは、30年前からのこと。その動きが顕著になったのは、05年1月、当時の小泉純一郎首相が施政方針演説で「攻めの農政=国産農水産物輸出の振興」策をぶち上げたときだ。その後、政府は輸出増強策を打ち出しながら、輸出の後方支援となる種苗法や家畜改良増殖法の改正に手をつけてこなかった。
農水省のサボタージュは、政府が「農林水産物・食品の年間輸出額の19年1兆円達成」を16年8月に打ち出したときも、種苗法と家畜改良増殖法の改正に着手しておかなかったことだ。その前年には農水省としては2回目となる「知的財産戦略2020」を策定。その中で「知的財産の保護・活用による海外市場開拓」を掲げていた。ところが当時の食品産業局長は、種苗法改正に着手せず、同戦略の中の「伝統や地域ブランド等を活かした新事業の創出」、地理的表示保護(GI)制度を優先させた。
この政策選択の判断ミスが後に被害をもたらしたことは、19年6月12日付け産経新聞の「シャインマスカットの苗木、中韓へ無断持ち出し和牛は精液をフェリーで」の記事が雄弁に物語る。以下の()内は筆者による補足説明。

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