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特集

種苗法改正で日本農業はよくなる!【種苗法改正】徹底取材 育種家と農家のリアルな声一挙掲載


許諾料は苗ではなく、商品の中にロイヤリティ料として入れることを事前に販売先の加工会社と取り決めている。農家個人が収穫物を販売した場合も、収穫物重量当たりのロイヤリティ料を設定することは、海外では一般的だという。これらは双方の同意に基づく商業契約のため、現行の種苗法下でも可能である。
そして最後にこう締めくくる。「育種の開発には、時間と労力がかかる。新品種を使う農家は、最大限活用した方がいいと思う。種苗法改正でギャーギャー騒いでいる人は、従来通りの一般品種を栽培すればいいんじゃないでしょうか。選べるんですよ。潤沢に品種という金の卵を増やさないと、消費者が一番損しますよ」。

【分類 個人育種(ブドウ)】
林ぶどう研究所(岡山県岡山市) 林 慎悟
https://grape-labo.com/
農家も育成者も「よい生産物」にはよい評価や対価を得たい気持ちは同じ

岡山県岡山市で、ぶどうの個人育種家として品種改良を続ける林慎悟氏。SNSのnoteで種苗法改正にまつわる議論について声を上げるほか、YouTube林ぶどう研究所のチャンネルを開設し、ゲストを招いて種苗法改正や育種という仕事に関して理解を深める活動をしている。

■苗代は果実収入の1%にも満たない

20歳の頃から育種を始め、2014年に「マスカットジパング」という岡山県のみで栽培許可する品種を開発した。「新品種には多大な費用と労力がかかりますが、それを回収する仕組みが今はない」。民間の育種家(民間企業と個人育種家)によって開発された有名な品種であっても、私財を投じ苦しい状況において研究に携わっており、その状況は改善されていない。
とくに果樹は種苗の購入機会が非常に少ないため、厳しい状況に置かれている。苗木を1本購入すると、10~20年ほどは十分に収穫できるが、現行法では許諾なく農家は登録品種の自家増殖が可能なため、2本目からは無料で増殖し続けられる。たとえば、1本の苗木で年間200房のぶどうが収穫でき、1房の卸価格が1000円だとすると、1本の苗木代5000円を支払ったとしても、200万円(200房×10年×1000円)の収入となり、苗代が売上の1%にも満たない。育種家としては、現在の仕組みの中で苗木を1本販売すると、次の販売機会は何十年か先で、経費を回収して次の品種の開発コストを捻出することは到底不可能だ。

■ 海外での品種登録は高額で、運用上の課題も残る

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