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特集

種苗法改正で日本農業はよくなる!【種苗法改正】徹底取材 育種家と農家のリアルな声一挙掲載



■ 高品質の品種に対価を得たいのは当たり前

しかし現状では、生産者が自由に自家増殖でき、育成者に対価が支払われない一方で、登録のための維持費や、取り締まりのためのコストもかかる。そのため、民間の育種家の中には、品種登録をすることにメリットを感じない人もいる。登録せず、品質が不安定でも販売してしまうと、生産現場にも影響を及ぼす。「開発費の一部を何らかの形で生産者が負担することは、そんなにおかしいことではないと思います。嫌な人は一般品種を選択すればよいだけです」。
種苗法改正の議論で、農家のみが苦境に立たされるという論調が出ていることに違和感を抱くという。「市場原理の中にいるので、儲かる形にしていかないといけないと思います。農家も生産物を高く売りたいと思っているはずです。テーマが変わっただけで、育成者も『この品種は』と思うものは、できるだけ高く評価してもらいたいと思っていることを知っていただきたいです」。今後は育種家、種苗業者、農家の三者で負担していく仕組みを考えなくてはいけない。そして、農家、種苗業者、育成者にも妥当な対価が支払われる仕組みを考えなければいけない。
(注:本記事はnote〈林ぶどう研究所〉を許可を得た上で編集・転載、また追加取材をしたものです)

【分類 県育種→個人育種(カンキツ)】
おはら果樹園 小原 誠
https://ohara-mikan.jimdofree.com/
公的機関も民間も、果樹の育種は現行システムでは採算合わず

おはら果樹園の小原誠氏は現在63歳。大分県に33年間勤務し、うち20年間は県柑橘試験場で育種を行なってきた。現職時から兼業農家として民間育種を続けており、7年前に早期退職して個人育種家になった。2020年5月18日付で、「マコポン」という品種の出願が受理されたばかりだ。

■ 登録維持のための経費すら賄えず、維持が放棄される

県職員時代と個人育種の相違を尋ねると、「おおよそですが、各県や農研機構が一つの品種を世に出すためには、おそらく億というお金がかかっているんじゃないですかね。果樹の場合は、許諾料での開発費用の回収は1%もできていないですよ。それと、県は10名以上が品種の開発に関わっていましたが、農研機構も10名から20名ではないでしょうか」と答えが返ってきた。
制度上は品種が登録されると、果樹の場合は30年間、育成者権を維持できるが、そのための費用が総額で90万円近くかかる。現状では、登録維持費も毎年要するが、許諾料が入らずにコストだけがかかり、25年もしくは30年以前に維持を放棄し、登録が切れてしまう品種も多い。ただし、農研機構など国やそれに準ずる機関は、出願料や育成者権維持のための登録費用などが不要なため、育成者権が最後まで維持できる。

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