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ビールのブランドが大変化している。筆者が若いころ、1980年代、アメリカに頻繁に出入りしていたとき、よくビールを飲んだ。「バドワイザー」だ。美味いと思った。しかし、バドは労働者のビールだ、エリートは「クアーズ」を飲むと言われ、時々飲んだ。コロラド州ロッキー山脈の清冽な水で造ったクアーズは軽い味がした。当時はバドワイザーが業界の巨人で、クアーズは小人であった。しかし、今はライト化が進み、「バド・ライト」が最上位、「クアーズ」が続く。昔ながらのバドはかなり後塵を拝している。ライト化は若者のアルコール離れと共に、大きな潮流になっている。
もう一つの注目点は、「缶入りワイン」の登場だ。スーパーマーケットには色とりどりの缶入りワインが並んでいる。350ミリリットル、500ミリリットルの1回で飲み切れるサイズが好まれている。流行だ。ワインがカジュアル化したのであろう。
アメリカの酒事情を語るとき欠かせないのは、1920年代の「禁酒法」時代であろう。禁酒法下も、酒の量は減らなかったと言われる。国境を接するメキシコから入ってくるテキーラ、カナダから入ってくるカナディアンが多かった。もどきのお酒もたくさん造られ、酒文化が花開いたようだ。
この時代も、「カクテル黄金時代」(1860年代~禁酒法時代)が続いた。キッチン・ドリンカーもカクテルを飲んでいたようだ。カクテルはアメリカの国民酒を語る上で欠かせない。
さて、日本酒の進出も話題から欠かせない。大関、宝酒造、月桂冠をはじめ、現在約30社が現地進出している。現地生産は年間約1万9,000キロリットル(推定)である。日本からの輸入も6,000キロリットルある。合計2万5,000キロリットルだ。金額では3億4,000万ドルである(酒類市場の0.5%)。アメリカは清酒の潜在市場として無限大だ。
アメリカの動向は、日本に何を示唆するか。飲み方も変わり、容器やデザインの変化が求められている。新しいマーケティングのときであろう。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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