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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

チリ 市場開拓から栽培の復活を夢見るスーパーフード・ヘンプ


大麻草は、2005年に可決された麻薬法第20000号で初めて危険な薬物リストに入り規制されたものの、少量の個人使用と所持は非犯罪化が実現した。その後、近隣のパラグアイからマリファナの流入が拡大すると、08年にコカインやヘロインとともにマリファナの罰則規定が強化された。ところが、12年に社会党上院議員のフルヴィオ・ロッシ氏がマリファナの使用を公言したことが物議を醸した。さらに13年に精神科医のミルトン・フローレス氏が大麻草120株を自家栽培して逮捕された事件によって、有識者層を巻き込んだ議論が進んだ。
こうした動きを受けて、ダヤ財団がオーストラリアのAusCann社と連携して行なった1000人規模の治療プログラムの一環として、14年に医療用大麻の栽培と配布が許可された。翌15年には、麻薬法第20000号が定める危険な薬物リストからマリファナを削除する改正案が議会で可決。小児科医出身で同国初の女性大統領ミシェル・バチェレ氏が署名し、麻の医療目的の使用に道を開いた。
一方、マリファナ成分をほとんど含まないヘンプは、80年代に約2000haの栽培実績があった。しかし、繊維分野では次第に化学繊維に替わっていったため、90年代にはほとんど栽培されなくなった。法制度では、農業省が大規模栽培の栽培許可を付与する権限を持ち、その要件は07年の政令867による。しかしながら、チリ社会ではマリファナ=薬物という認識がいまだに強く、政治的および行政的に栽培許可の下りない状況が続いている。このあたりの事情は、日本とほぼ同じといえよう。

ヘンプ食品の市場開拓 健康志向派の人々に

北米では10年代初頭から、栄養価が高く低カロリーな食材を指す「スーパーフード」が注目されていた。その代表格は、アンデス山脈一帯で食べられているヒユ科の雑穀の「キヌア」、同じくヒユ科の雑穀である「アマランサス」、メキシコ中西部からグアテマラ北部にかけての山岳地帯が原産地の一年草の「チアシード」、そして、中央アジア原産の「ヘンプ」である。偶然にも南米系の農作物に注目が集まるなか、このスーパーフードとチリをヘンプで結び付けたのが、「ニュートランビス(Nutranabis)」というヘンプ食品ブランドを立ち上げたバーバラ女史である。
彼女の取り組みは当初、ヘンプとマリファナとの区別に社会的な理解が進まなかったため、栽培許可を得て事業を進めることに困難を極めた。そこで、約2年にわたる調査と試行錯誤の期間を経て、14年にドイツからオーガニック認証のあるヘンプ食品を輸入し、チリの人々にスーパーフードとして市場を開拓するところからのスタートとなった。前述した同国でのヘンプ栽培の歴史、なかでも南米随一の産地であった記憶が忘れられていたので、ヘンプの栄養価の高さと美味しく料理として食べられることを目指したのだ。

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