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土門「辛」聞

“冬のお化け”話で煽る種苗法改正反対派に根拠なし(2)

前月号で種苗法改正反対派の主張を“冬のお化け”とこき下ろしておいた。冬にお化けが出てきたためしがないのに、お化けが出るぞと不安を煽っては、善男善女をお化け屋敷に誘っているという意味。“冬のお化け”仕掛け人は東京大学大学院教授の鈴木宣弘さん。お化けは本当にいるのか。

綿作農家の自殺原因は種代か

鈴木さんが仕掛けた“冬のお化け”初デビューは2012年のようだ。TPP反対組織のサイトで見つけた「鈴木宣弘」の名前入り「TPP参加に向けての国民無視の暴走を止める」の7月11日の日付が付いたメモ書き文書で判断した。TPPが抱えていた問題点を網羅的に整理してあり、なるほどな、と思わせるのもあれば、これはちょっと、と思ってしまうようなものもあった。
後者の代表例が「遺伝子組換え食品が世界を襲う」。“冬のお化け”はここで登場する。文中の「M社」は、鈴木さんの商売道具となる米モンサント社のことだ。
「遺伝子組換え体(GMO)の種子販売がM社などに独占され、特許がとられており、TPPで世界中の種がGMOになっていくと、世界の食料・農村はM社によってコントロールされていきます。GMOの種がこぼれて在来種が『汚染』されていく事態も広がっています。農家はそれまで自家採種してきた種を、毎年高い値段で買い続けなければならなくなります。そのための借金などが途上国の農村経済に暗い影を落としていることが、インドの農村の自殺率の上昇の例で指摘されています」
東大教授の肩書きを持つ方にしては極めてズサンな内容。ポイントとなる「農村の自殺率の上昇」の裏付けデータがないことだ。インド内務省全国犯罪記録局に自殺者を職業別に整理した統計がある。「農場経営・農業従事」という分類があり、全自殺者に占める割合も示されている。モンサントがインドにGM種子を導入したのは2002年だった。
1995年以来の数字を追ってみた。確かに2002年は最多の1万7981人。それ以前も1万6000人台が4年続いていた。鈴木さんがそのメモを書いた12年は02年に比べて23・5%も減っている。GM種子が急速に普及するにつれて、自殺者が減っていったという見方ができないだろうか。
次いでGM種子を毎年買い続けたことが自殺原因になったという記述。これも根拠が示されていない。因果関係を示すドンピシャの統計はないが、傍証としてインドの農村における綿作農家の自殺者急増を扱った報道記事は参考になる。
14年5月5日付け英ガーディアン紙。「インドの農家自殺、GMOが関連か」という写真特集は、「コストのかかるGM種子、肥料、殺虫剤の導入」による借金と指摘しながら、一方で「不利な気象条件や、綿花の世界的な価格のほんの少しの低下でさえ、農家に災いをもたらす可能性がある」と丁寧に説明。

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