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特集

種苗法改正で日本農業はよくなる!後編 品種の権利侵害と民間育種の実態に迫る


そして、改正後は全ての登録品種の自家増殖は、育成者の許諾が必要になる。
「品種登録時に、正規に申し込む人なら安心できます。不正増殖しておいて、バレたら『許諾してください』という人には許諾したくないのが本音」
同氏は、本来なら裁判所の調停や弁護士による調停では、嫌疑をかけられている人が比較栽培の費用全額を支払ってほしいと考えているが、それも簡単ではないという。Gメンは取り締まりの権限もなければ、費用負担もしない。もちろん農水省もだ。また、種苗法に精通している弁護士もほんの数名しかいない。そうなると、やはり育成者が対応することが余儀なくされる。
「私はこれからも今までと変わらず、自分が育種パートナーと育成する品種では不正増殖を抑えるだけの強い特徴を有する品種を生み出しながら、正しい方向に引っ張っていきたいです」

育種組織ビスタ・エフ・エフ・インク
(Vista Future Flowers Inc.)主宰
「全国新品種育成者の会」顧問
佐藤 和規

1947年生まれ。大手種苗会社で40年間、育種開発に従事。定年退職時に育種組織ビスタ・エフ・エフ・インク(Vista Future Flowers Inc.)を立ち上げ、若手育種家を育てながら、世界に紹介できる品種の開発を目指す。ここ10年間での代表的な開発商品は、ビデンス「ビーダンス」シリーズ、プリムラ・マラコイデス「ウインティー」シリーズなど。サントリーフラワーズ社の品種として流通。別な植物(主に宿根草)の開発も平行して進め、米国の種苗会社を通じて世界に供給している。

許諾料の決定方法(佐藤 和規)

種苗法改正により、市販品種の育種においては、許諾料の相場が形成しやすくなりますし、育成者が一方的に不利な条件を飲まなくてよいように改善しやすくなります。許諾料の相場は、品種の生産力(カーネーションであれば、鉢物なら1本苗から1鉢、切り花なら1本の苗から5本から10本の切り花)と、栽培可能年数(一年生、数年栽培できる宿根草、果樹など長年収穫できる)などの総生産力から、製品一つにどれだけ無理のない範囲で許諾料を負担できるか勘案します。育成者は、その調査データを流通業者や農家に開示します。たとえば、切り花のカーネーションの場合、仮に許諾料が15円だとしたら、7本切れば1本2円だと農家は理解できます。
一年生の草花なら、許諾料は市場流通価格の約3%(5円程度)であることが多いです。また、許諾証明のためのラベルを育成者が準備し、許諾者に販売することが通常ですが、その経費15円と合わせて、1苗当たり約20円が相場です。農家が1万本の許諾証明ラベルを購入した場合、ラベルがなくなるまで何年かに分けて増殖することは問題ありません。ラベルを添付せずに出荷したら不正繁殖となります。ただし、製品の病理管理は農家側で実施してもらっています。

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