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齊藤義崇の令和の乾田直播レポート

多様化する直播品種


ジベレリンは植物生育調整剤として国内で2社が取り扱っている薬剤だ。ほかの作物で農薬登録されているので、乾直水稲での試験結果が揃えば登録を拡大することは可能である。稲の場合には検査対象が穀粒である玄米のほか、飼料に用いる稲わらや籾米にも及ぶ。検査費用に対して需要が見込めなければ、登録拡大にメーカー側が積極的には動けないという事情が伺える。乾直水稲の市場、さらには出芽に課題が生じている雪国での乾直水稲に限れば、需要が足りないのは仕方がないと言わざるを得ないのだろう。
農薬は登録する際に、一生涯に渡って毎日摂取し続けたとしても健康への悪影響がないと推定される許容一日摂取量(ADI)と、24時間またはそれより短時間の経口摂取による急性参照用量(ARfD)を、さまざまな食品を通じて摂取される量の総計で評価する。多くの作物で使用されている場合、さらにはその作物で使用量が多い場合には、効果が認められても実用しづらいのである。
日本は年間を通じて降雨量の多い気候で、世界的に見ても殺菌剤など農薬の使用量が多いと言われている。ジベレリンに限らず、農薬は諸刃の剣で、薬害も発生しやすい。薬害より効果が上回る場合に、非常に有効なアプローチになるということを忘れてはいけない。
品種に関わらず、作業体系や機械を駆使して播種深度を揃えれば出芽率を高めることは可能である。しかし、出芽の様子を観察して、そのメカニズムがわかればわかるほど、生産者側での努力の限界が見えてくる。その先は、早生で、より出芽性が高く、移植と同等の食味・収量が確保できる品種が出てくれば、百人力というところである。

直播適性の高い品種が普及拡大を支えている

ところで、北海道の乾直が盛り上がっているのは、東日本大震災以降に北海道産米のブランド力が向上したことも影響している。その背景には、良食味品種の開発があり、直播適性の高い早生品種は直播技術の普及拡大に一役も二役も買っていると言えるだろう。
表1に北海道の主要品種の直播様式別の作付面積(18年産)を示した。移植も含めた総作付面積は、良食味の「ななつぼし」「ゆめぴりか」が7割を占める。一方の乾直では、冷凍米飯向けの「大地の星」、飼料用米の「そらゆたか」、食用米の「ほしまる」が主要品種となる。18年産からは、北海道産米に「えみまる」の本格的な生産もスタートした。低温苗立ち性や耐病性に優れた早生品種で良食味なことから、直播米として期待されている。さらには、低アミロースの良食味の極早生品種「さんさんまる」も20年産から130ha規模で作付けが始まった。

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