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齊藤義崇の令和の乾田直播レポート

多様化する直播品種


直播に適するのは、出芽性に優れ、短稈で倒伏しにくい早生あるいは極早生の品種である。私が普及指導員として現場を歩くようになったのは96年だが、当時は乾直適性の高い品種がまだ開発されていなかった。初任地の当麻町では「ゆきまる」という品種で挑戦した。栽培管理では補えず10戦8敗くらいの成績だっただろうか。当時一緒に挑戦してくれた乾直人には感謝しても足りないくらいである。その後、「ほしのゆめ」で挑戦したが、ほしまるや大地の星は、北海道の直播の拡大に大きく寄与した革命的な品種である。
大地の星は、冷凍米飯向けの極早生品種で、最初は乾直向けという触れ込みではなかった。極早生品種は感温性を高めている反面、育苗中に25℃以上になるとその時間が長いほど早期異常(不時)出穂を生じる。早期に出穂すると、分げつが止まるなど、収量減の要因になる。その対策に、花き栽培に用いる遮光ネットをかけて温度を下げる方法も試行されたが、育苗の省力化を図る一方でさらに手をかけることが問題になった。それならばと、直播で試してみたところ、相性が良かったのだ。
冷凍米飯向けの業務用米品種は低価格で取引されるため、実績を重ねた乾直人のなかには、ほかの移植向けの良食味品種で挑戦する者も少なくない。たとえば、ななつぼしは出芽性が良いので、実りは遅いものの移植と同等の収量を望まなければ、肥培管理に気を配れば相応にとれるという。
いずれにせよ、直播適性の高い品種の作付けが始まったが、その前から乾直を試みてきた乾直人は、百戦錬磨の栽培のプロになっている。品種だけは現場でどうにもできないので、自分のできることでベストを尽くそうと試みた結果として腕前が上がり、そこから得られたことも多いはずである。

乾直人の生産努力で栽培品種はより多様に

昨今は北海道の乾直イベントにも府県、遠くは九州からも参加者が集うので、全国の乾直人に2020年産の作付け品種を聞いてみた(表2)。各地区の雄は、食用米、業務用米、飼料用米、酒米など多様な品種に挑戦されているようだ。そのことにはただただ感無量である。
ここに挙げられている品種のなかにはもちろん、直播向けに開発された品種もある。東北以西でも直播品種は近年拡充されつつあるようだ。東北では、「萌えみのり」に続いて、18年に「ちほみのり」が品種登録された。また、九州では直播でも倒れにくい移植兼用品種として「たちはるか」が開発されている。

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