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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第20回(番外編) 日本ワインは成長産業か?北上仮説、都道府県別産地動向 マンズワイン小諸ワイナリー(長野県小諸市)
- 評論家 叶芳和
- 第40回 2020年08月24日
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1 輸入ワインの優勢つづく――日本ワインのシェアは4.6%
本連載は、ワイン産業の実態を明らかにすべく、現地ルポを繰り返してきた。その生態の是非に関わらず、今日の姿をありのままに記録することを重視してきた。今回はワイン産業の現状を統計的に把握し、ワイン産業の大まかな全体構造を描くことにしたい。
情報公開が少ないのがワイン業界の特徴でもあるので、現地調査で得た情報を加えながら統計を読んでいきたい。それは逆に、現地調査から得た仮説、例えば、ワイン北上説、技術がテロワールに代替するという仮説、等々を統計的に検証することでもある。
■新しい表示規制
ワイン表示規制が2018年10月30日に施行された。従来、国内で製造されたワインは、原料が輸入濃縮果汁であっても、国産ブドウ100%であっても、「国産ワイン」と表示され、輸入ワインと区別された。しかし、これでは紛らわしいので、新しい表示規制では国産ブドウのみを原料とし日本国内で製造されたワインは「日本ワイン」と表示できるようになった。輸入濃縮果汁を原料としたものは「日本ワイン」と表示することはできず、業界では「国内製造ワイン」と称することが多い(酒税法上は今でも「国産ワイン」である。なお、日本ワインも国内製造ワインの内である)。
例えば、業界大手のサントリーワインの場合、18年販売実績は7700万本と巨大であるが、日本ワインは72万本に過ぎず、輸入原料の国内製造ワイン(国産カジュアル)4800万本、輸入ワイン2800万本である(本誌19年6月号、拙稿参照)。
こうした明確な表示規制から、「日本ワイン」がクローズアップされ、日本ワインブームが期待されたのである。ちなみに、国内製造ワインに占める日本ワインの割合は約20%である。
■輸入ワインのシェアは約7割
日本のワイン市場は、食生活の多様化と共に、何度かのワインブームを経験しながら拡大してきた。家庭用市場はフルボトル500円ワインの登場で開拓され(1994年、輸入原料ワイン)、その後、赤ワインに含まれるポリフェノールが注目され、97年後半から赤ワインブームが起こり、98年に爆発的な市場拡大を見た(第6次ワインブーム)。2012年にはチリ等新世界からの低価格輸入ワインが消費を牽引し(第7次ワインブーム)、そして現在、「日本ワイン」人気がワインブームを演出している。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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