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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第20回(番外編) 日本ワインは成長産業か?北上仮説、都道府県別産地動向 マンズワイン小諸ワイナリー(長野県小諸市)
- 評論家 叶芳和
- 第40回 2020年08月24日
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しかし、「日本ワイン」ブームと言われながら、日本ワインの成長率は年率3%、ワイン流通全体に占める比率は4.6%である(国税庁「国内製造ワインの概況」)。この点をしっかり認識しておかないと、ワイン産業の実態を見間違いかねない。
表1に示すように、日本のワイン市場の規模は約38万キロリットルである(フルボトル換算約5億本)。人口1人当たり年間約4本消費している。
内訳は、輸入ワイン68%、国内製造ワイン32%である。また、国内製造ワインの8割は輸入濃縮果汁を原料とする国産ワインであり、残り2割が国産ブドウ100%の日本ワインである。つまり、日本で流通しているワインの95%は輸入由来であり、輸入依存度が大きい。
時系列でみると、ワインの消費が少なかった1970年代から80年代前半にかけては、国産ワインが約75%を占めていた。90年代に赤ワインブームでワイン消費が大きく伸びたとき、輸入で賄ったため、90年代央には国産・輸入が逆転し、2000年には国産39%、輸入61%と格差がついた。増加分の大半を輸入に依存してきたわけである。供給力、品質、価格ともに、輸入ワインには勝てなかったといえよう。
2000年代に入ると大きな変化は見られない。国内製造ワインの競争力が少し向上したのであろうか。
留意しておきたいのは、輸入ワインに押されて国産ワインが減ったわけではないということだ。国内製造ワインは安定的に拡大している(98年の赤ワインブーム終焉後は一時的に落ちたが)。輸入依存度の上昇は国産を上回るスピードで輸入が増大したからだ。
もちろん、この時代、国産ワインとはいっても、それは輸入濃縮果汁から造ったワインである。食生活の多様化に伴うワイン市場拡大に対応するため、国産ワインの生産を増やしたわけだが、国産ブドウ100%のワイン(純日本ワイン)がフルボトル500円で供給できるわけが
ない。
■酒類の減少傾向、ワインは増加傾向
ワイン市場の成長率は、この10年間平均では年率4%である。ワインブームが騒がれ、またEPA協定による自由化(関税ゼロ)が話題になったが、その割には4%成長は低いように思われる。しかし、酒類全体は微減が続いているので、その中で見れば、4%成長は順調な伸びという評価もできる。
図1に示すように、1990年から2018年にかけて、清酒は137万キロリットルから49万キロリットルに減少した。大幅な減少だ。ビールも清酒と同じく半減した。全酒類も、90年の903万キロリットルから18年824万キロリットルに減少した。これに対し、ワインは緩やかではあるが増加傾向にある。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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