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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第20回(番外編) 日本ワインは成長産業か?北上仮説、都道府県別産地動向 マンズワイン小諸ワイナリー(長野県小諸市)
- 評論家 叶芳和
- 第40回 2020年08月24日
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また、山梨県を100とした時、長野県の生産量は15年度58、16年度68、17年度74、18年度76と上昇。長野が山梨を追い上げている。ワイナリーの増加数、ブドウ供給力を考えると、このキャッチアップはさらに続くと思われる。このように、日本ワインの生産拠点は、現状は山梨県がトップであるが、山梨県の独占的地位は次第に低下している。
もう一つ注目したいのは、ワイナリー数がどんどん増えていることである。11年に全国で154場だったが、19年(3月31日現在)には331場(免許者数312者)に増えた。わずか8年間で倍増した。特に増加が大きいのは、北海道7場から37場へ、長野12場から38場へ、岩手5場から11場へ等だ。新規参入ラッシュと言ってよい。
同じ酒類でも、清酒は参入規制が厳しく、新規参入はほとんどできない。これに対し、ワインは清酒と違って、もともと“需給調整”を目的とした参入規制がなく、それに加えて、「特区」制度があるからだ。ワインは醸造量6キロリットル以上でないと製造免許を与えないが、特区に認定されれば、2キロリットルで参入できる(フルボトル換算約2700本)。したがって、近年、ワイナリーの増加が多いが、ほとんどは小規模ワイナリーである。
■ワイン産地は北上する
ワイナリー立地は、長野、北海道、岩手で特に増えている。冷涼な気候は高品質のブドウ作りに好条件であるが、温暖化の影響で北上する傾向も出ている。山梨県勝沼の独占度が低下していく背景である。
一方で、列島南部の九州地方で良質のワインが生産されている事例もある。大分県安心院(あじむ)町や宮崎県都農(つの)町のワイナリーは、日本ワインコンクールで連続入賞している。技術革新で、降雨が多いというテロワール(気候風土)の不利を克服しているのであろう。 (次号に続く)
前号の修正:P33の4段目「(すべて借地)」は「(うち自社畑4.6ha)」に。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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