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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
オーストリア 栽培・加工、商品販売、観光までヘンプづくしの村おこし
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第33回 2020年08月24日
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この村がヘンプで村おこしをすることになった発端は、『ハンフタール村スタディーズ』という歴史書が出版された89年に遡る。同村に関わる最も古い記録とされる寄付証書が発行された1149年から数えて850周年を記念する祭典が行なわれることになった。この祭典の準備期間中に実行委員会のヨハン・シュミット会長がヘンプに注目したのだ。村の歴史文化を学べる場としてヘンプ博物館の建設が進められ、その後の新しい産業展開も展示に加わり、99年に開館した(図2)。
時を前後して、1928年に創設されたブランデーの蒸留所を経営する農業協同組合が、95年のヘンプ解禁と同時に栽培を始め、ヘンプオイルの搾油所を開設。ヘンプ栽培を復活させた同組合は組織を改編し、06年にヘンプ事業体(現・ヘンプランド社)の拠点の一つをハンフタールに構えたのである。栽培、加工に加えて、ヘンプ食品や雑貨を購入できる専門店もオープンした。
ヘンプに関わる事業は順調に拡大し、村に新たな産業を創出していった。10~11年に隣接するチェコ共和国の南モラヴィア商工会議所が所管するヘンプ開発センターが、EUの補助金を申請して採択されたときには、村と連携して参画した。14年には120万ユーロ(約1億4000万円)の投資をして、近代的なヘンプの繊維と麻幹(オガラ)を分離する工場も開設。いまでは、ヘンプの栽培面積は500haを超え、ヘンプランド社はヘンプ産業を網羅する企業へと成長した。
現在同社の代表を務めるゲルダ女史は栄養学者としての知見を発揮し、パスタ、ミューズリー、お茶、麻の葉粉末、ペットフード、ヘンプリターなどオーガニック認証付きのヘンプ食品を生み出した。また、馬、犬、猫、小動物向けの飼料添加物として、ヘンプ種子を粉砕したものにヘンプ葉粉末を10%混合させたヘンプミールも商品化した。カルシウムや鉄分を多く含むヘンプ葉を使っているのが特徴だ(図3)。繊維はナポロ社によって住宅用断熱材(13年にオーストリア気候保護賞受賞)に加工され、オガラは馬用敷料として販売されている。
同社の契約農家になると、マリファナ成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)が0.2%以下の播種用種子を25%割引で購入できる特典を得る。また、収穫したヘンプ藁束は、独占的にヘンプ繊維断熱材を製造しているナポロ社が全量買い上げることが約束される。なお、栽培品種は、地元の農業専門学校と品種試験を行ない、オーストリア北東部の気候に最も適した「Fedora 17」と「USO 31」の2品種を採用している(図4)。いずれもEUの認定品種である。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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