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【土門「辛」聞】
“冬のお化け”話で煽る種苗法改正反対派に根拠なし(3)
- 土門剛
- 第192回 2020年08月24日
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農水省が作成した“冬のお化け”ショー対策
そう思った根拠は、農水省知財課が種苗法改正に備えて2019年末に作成したという「主体別品種開発数(18年度末時点)」という1枚紙の資料。取材や国会議員のレクチャー用に作成された説明資料らしく、ホームページに公表されたものではない。ここでは非公表版と呼んでおこう。
同じような内容のデータを掲載した公表版というのがある。同年1月18日の「農業資材審議会第18回種苗分科会」で配布された「国内外における品種保護をめぐる現状」の4ページ目にある「登録者の業種別内訳」。両者の違いは、非公表版が権利存続中の品種が対象、公表版は品種登録制度が発足した1978年から2017年までの登録品種数の累計が対象。
非公表版は、種苗法改正に向けた鈴木さん作・演出の“冬のお化け”ショー対策のため作成したものだ。根拠は、主体別品種開発数の数字を並べて、国と都道府県の「公的機関」による開発数がダントツに多いことを強調する次の説明文だ。
「作物別にみた場合、農業上重要な食用作物や果樹では、公的機関の開発した品種が大きな割合を占めている」(ゴマ点は原文色分け強調)
食用作物とは、稲や麦類や豆類など穀物に芋類を含めたもの。穀物は主要農産物として位置づけられていて、その種子開発に国や都道府県が関与すると定めた主要農産物種子法は2018年に廃止された。
穀物の種子開発に民間企業の参入を促すための措置だったが、鈴木さんは主要農産物の種子開発から都道府県を切り捨てると屁理屈を並べて種子法廃止に反対していた。“冬のお化け”ショーの種子法廃止反対編で、鈴木さん一流の屁理屈は、19年4月4日付け農業協同組合新聞への寄稿記事が分かりやすい。
「(種子法廃止で)公共種子事業をやめさせ、(農業競争力強化支援法で)国と県がつくったコメの種の情報を企業に譲渡させ、(種苗法改定で)自家採種は禁止するという3点セット」(読みやすいように( )部分を文末ではなく文頭に置き換えた)
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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