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新・農業経営者ルポ

キロ単価1万円のイチゴはなぜ生まれたのか


ある時、それを知った客からこんな提案を受けた。「『注文する』のではなく、『ありがとう』と伝えてみたら」。そこで文面は「ドライバーさん、いつも丁寧に扱っていただきありがとうございます」と変え、その横には我が子の幼少期の写真を載せた。これが奏功した。ドライバーが武下に「丁寧に扱いたくなる」と直に伝えたように、凍結事故は減っていった。

発注理由に次の商売の手あり

「スーパーやデパートにはできない、産直農家だからこそできるサービス」という意味ではメッセージカードもそうだ。贈答用商品は客から相手に送る言葉を聞き取り、武下が自らカードに筆書きする。
そうした客との対話の中で新たな商売のヒントが生まれる。それは新型コロナウイルスについてもそうだ。武下いわく「今年は『逆・母の日現象』が起きた」とのこと。母親が人口過密な都市に住む子息や孫を気遣い、母の日にイチゴを贈答する母親が増えたという。そのことに気づいた武下はホームページにすぐに「電話注文はこちら」という表示を載せた。これでECサイトでの注文に慣れていない高齢者を取り込んだのだ。

SNSでイチゴを宣伝しない訳

以上の話からわかるように、武下が大事にしているのは自分の事業への思いや感動をより多くの人に届ける「伝達力」だ。そのための「仕組み」として売る面ではECサイトを利用している。
一方で武下は売る以外のことについても伝える仕組みを持っている。それは講演会やSNSなどだ。講演会は以前よりあえて減らしたとはいえ毎月1回こなすほか、LINEやFacebook、Instagramなどでは毎日のように発信している。では、何を伝えているのか。武下はイチゴについてほぼ語らない。なぜなら「多くの読み手にとって関心があるのはイチゴではなく作っている人だから」。
代わって講演したり投稿したりするのは、小学校のPTA役員での活動や学校教育に対する思いや考えなど普段の生活のことがほとんど。すると、PTAや教育に関わる人たちからの注文が入ってくる。イチゴの宣伝ばかりしていた時には想像できないほど多く、幅広い人たちからの反響である。学んだのは「利益に関係ないところで共感した人によって利益につながる」ということだ。
同じ理由でFacebookでは毎日、ハウスのパイプで懸垂した動画をアップする。再生回数は1日平均200回。「なんで懸垂している」「悶えている姿が好き」などのコメントが入る。話題作りになっているのだ。

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